なぜかくも、安倍政権は総力を挙げて事態を隠蔽するのか、「森友(アベ友)学園疑惑」隠しは却って安倍政権の命取りになる可能性が大きい、国民世論は「脱安倍」へと着実に向かい始めた(14)、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その45)

 トランプ大統領当選から金正男暗殺事件へ、この間、国際問題を中心に回ってきた朝昼のトークショーが最近は一転して森友学園疑惑に向かっている(森友学園のことを関西では「アベ友学園」と呼んでいる)。しかも国会は開会中、国会審議を通して毎日新しいネタが次から次へと提供されるので、報道側にとっても視聴者側にとっても一番面白い展開になっているのである。事態の推移は興味津々の有様で、「アベサマのNHK」に愛想を尽かした視聴者が、民放テレビに連日クギづけになるのも無理はない。

 3月6日午前の参院予算委員会審議の模様が面白かった。冒頭、与党側から質問に立った西田議員(京都区選出)は、「森友学園問題は冤罪だ!」「安倍夫妻は利用されただけだ!」「国有地売却と安倍夫妻は何の関係もない!」と声を張り上げて安倍首相を擁護した。通常、質問者は政府側答弁者の方に向かって質問するのだが、この日の西田氏はもっぱら野党席側に向かって「横向き」に質問するなど、質問の方向が違った。おかげで安倍首相は冒頭に一言二言、「私は関係ありません」と言っただけで、後は西田氏の独演にまかせて座っているだけとなった。

西田氏といえば、知る人ぞ知るウルトラ右翼。夫婦別姓問題などには命を懸けて反対する極め付きの国家主義者だ。だから彼が質問に立つということは、自民党のこの問題に対する態度を知るうえで大いに参考になる。予想通り、西田氏は攻撃の的を野党と報道機関に絞り、森友学園疑惑に関する野党質問は安倍夫妻を「冤罪」にも陥れかねない不当な内容であり、それを大げさに報道するマスメディアは「フェイクニュース」(偽情報)を拡げているだけだと非難した。

 私はときおり映し出される安倍首相の顔を見ていたが、彼は頷くこともできず喜ぶこともできず、終始複雑な表情を浮かべて黙ったままだった。だが、内心では「迷惑至極」とまではいわないまでも、かなり困っていたに違いない。なぜなら、西田議員が躍起になって安倍首相を弁護すればするほど、視聴者の気持ちが自分から離れていくのを知っているからだ。「贔屓の引き倒し」とはまさにこんなことをいうのだろう。もっとも彼自身がいきり立って答弁に立ち、質問者に対して「そんな発言は犯罪者扱いだ!」「印象操作だ!」などと言うときには、我を忘れているので視聴者の反応などまったく気にしていない。きっと激しやすい人物なのだろう。

一方、西田議員の質問に対して答弁に立ったのは財務省理財局長だった。こちらの方は準備通り「先生の仰せの通り」を連発し、従来行ってきた説明を長々と繰り返す役割に徹した。「説明不足」とは説明する時間の長短ではなく、中身があるかどうかのことを言うのだが、この局長答弁は永田町や霞が関の模範となる官僚答弁そのもので、意味のない相槌を打つことで西田議員の独演(大立ち回り)を盛り立てた。太鼓持ちとはこんな人物のことをいうのだろう。

おそらく二人は安倍首相の前で点数を稼いだなどと思っているのだろうが、視聴者の方はもはや官僚答弁の内容などを気にしていない。その表情や口ぶりから事態の本質を感じ取っているのである。その点、理財局長の能面のような表情と白々しい答弁は権力者の言いなりになる(官僚の矜持を失った)役人の本質を余すところなく物語っていて、森友学園疑惑に加担してきた官僚機構の腐臭を振りまくに十分だった。森友学園疑惑に関する国会審議は、いまや安倍政権関係者の疑惑隠しを益々際立たせる段階にまで到達したのだといえよう。

これを裏書きするのが、政治学者の御厨貴氏が司会進行を務める3月5日(日)早朝のTBS番組「時事放談」だった。今回の放談者は二階自民党幹事長と漆原公明党幹部の二人、まさに言い放しの放談会でまるで狐と狸の芝居を見ているような錯覚に襲われた。今回の「時事放談」は司会者が一切反論しない。司会者が用意してきた質問を淡々と読み上げると、その度に二階氏がなにかしらぼそぼそと呟き、漆原氏が調子よく合わせて「はい、次の質問どうぞ」となる。

だが、この一問一答形式の放談会は非常に面白かった。例えば、森友学園疑惑に関して自民党は何か調査でもするのかとの質問に対しては、二階幹事長は「そんなことをやっている暇はない。大事な要務に支障が生じて仕事が滞る」と一蹴し、漆原氏は大きく頷いて「いま会計検査院が調査をしているから」と引き取る。見事な連係プレーだ。自民・公明の国会裏の連係プレーを目の当たりにしているようで、両党が森友学園疑惑をどう覆い隠すか、どう終止符を打とうとしているかがよくわかった。要するに合理的な説明は一切放棄して、事態を徹底的に隠蔽して幕引きを図ろうというものだ。

 3月7日、参院自民党森友学園疑惑の中心人物、籠池理事長の参考人招致を拒否した。証人喚問ではなく参考人招致でさえ応じられないというのである。「籠池隠し」が国民の批判を招くことはよく分かっているが、それでも隠さなければならないほどの大きな暗闇が背後に横たわっているのだろう。いまや国民は一連のいきさつを通して、どす黒い暗闇が安倍政権を取り巻いているのがよく分かるようになったのである。それとともに安倍首相の人物像に対する評価も釣瓶落としに下がっていくだろう。何しろ籠池氏は大阪では「天性の詐欺師」と称されている人物なのである。こんな人物に一国の首相夫妻が引っかかるなんて情けない限りだが、それが現実のものになったところに、国民は「地球儀外交」を掲げる一国の宰相の器の大きさを知ったのである。(つづく)