森友学園疑惑究明はいまや国民の声となった、これ以上の籠池隠しは内閣支持率の低下に拍車をかけるだろう、国民世論は「脱安倍」へと着実に向かい始めた(15)、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その46)

 3月10日から12日にかけてマスメディアの世論調査が相次いで行われた。中心テーマは、言わずと知れた「森友学園疑惑」である。3月14日現在、結果が判明している共同通信朝日新聞毎日新聞、NHKの4社についてその傾向を分析してみたい。

各社の質問の数や文章形式はそれぞれ異なるが、質問項目としては以下の4項目に分類できる。
(1)国有地が森友学園に格安で払い下げられたことを適切(妥当)だと思うか。
  ・共同通信、「適切だ」7%、「適切でない」87%
  ・朝日新聞、「妥当だ」6%、「妥当でない」81%
  
(2)政府が払い下げの経緯を十分に説明していると思うか(納得できるか)。
  ・共同通信、「説明していると思う」5%、「説明していると思わない」88%
  ・朝日新聞、「納得できる」12%、「納得できない」71%
  ・毎日新聞、「納得している」6%、「納得していない」75%
  ・NHK、 「大いに納得できる」2%、「ある程度納得できる」10%、
「あまり納得できない」31%、「全く納得できない」49%

(3)森友学園理事長を国会に招致して説明を求めることに賛成か(必要か)。
  ・共同通信、「賛成」75%、「反対」15%
  ・朝日新聞、「必要だ」70%、「必要ではない」18%
  ・NHK、 「必要だ」55%、「必要ではない」11%

(4)安倍首相と首相夫人の森友学園との関係について。
  ・共同通信、安倍首相の森友学園との関係に関する説明について
   「納得できる」31%、「納得できない」58%
  ・毎日新聞、安倍首相夫人が名誉校長を辞任したことについて。
「辞任したので問題ない」23%、「辞任したが問題は残る」58%、

 また、安倍内閣の支持率が前回(カッコ内数字)と比べてどう変化したかも最大の関心事だ。
  ・共同通信、「支持する」56%(62%)、「支持しない」31%(27%)
  ・朝日新聞、「支持する」49%(52%)、「支持しない」28%(25%)
  ・毎日新聞、「支持する」50%(55%)、「支持しない」31%(27%)
  ・NHK、 「支持する」51%(58%)、「支持しない」31%(23%)

 注目されるのは、共同通信調査を分析した京都新聞(3月13日付)の解説記事である。以下はその概要である。
(1)森友学園への国有地払い下げ問題で、安倍首相が自身や昭恵夫人らの関与を否定した説明に対して「納得できない」とする回答は、自民党支持層46%、公明党支持層59%、民進党支持層89%、支持政党なし64%に達した。
(2)国有地の評価額から大半に当たる8億円余りが差し引かれた売買に関しては、「適切だとは思わない」とする回答が、自民党支持層83%、その他政党でも大半を占める。
(3)政府による経緯の説明についても、安倍内閣を支持する人の87%が不十分だと回答した。
(4)森友学園の籠池理事長を国会に招致して説明を求めることについては、民進党支持層90%、自民党支持層72%が賛成した。

 これらの結果からまず言えることは、政党支持に関わりなく(保革無党派層を問わず)森友学園への国有地払い下げは不適切であり、かつ政府の説明は不十分なので、籠池理事長を国会に呼んで説明させるべき、というのが国民の圧倒的な声になっていることだ。とりわけ注目されるのは、自民党支持層から強い疑念の声が出ていることであり、これはこれまで安倍内閣を支持してきた保守層がこの問題に対して明快な説明を求めており、曖昧な幕引きがされるときは一気に「反安倍勢力」に転化する可能性を示している。

 このことは、友学園疑惑が今回の世論調査ではまだ内閣支持率の大幅な低下につながっていないことの説明にもなる。というのは、これまで安倍内閣を支持してきた保守層やその周辺は、現時点ではまだ内閣不支持までには踏み切っていない。前回調査に比べて支持率の低下は数パーセントの小幅な動きにとどまっているのが、その証拠である。だからといって、安倍政権が今回の内閣支持率下落を軽視していいことにはならない。籠池理事長が「何を言うかわからない」という理由だけで隠し通せるほど、この問題の底は浅くないのである。

 大阪府議会の動きも気になる。松井大阪府知事は、森友学園疑惑が維新の会へ向うことを防ぐため、国民の目を国会に集中させることに腐心している。国会が籠池理事長を承知して説明させるべきだというのである。目下のところその策動はある程度成功しているともいえるが、大阪府議会で籠池理事長の参考人招致が実現すると、そこから火種が国会に飛び火しないとも限らない。しかし、籠池理事長が参考人拒否をいつまでも続けるという事態になると、当然のことながら百条委員会による証人喚問の必要性が高まってくる。松井知事としては頭が痛い問題だが、この対応を誤るとこれを契機に大阪府民の批判が一斉に維新の会に向かうことになり、間近に迫っている堺市長選への影響が避けられなくなる。

 森友学園疑惑は、いまや今後の政局の行方を左右する「時限爆弾」ともいえるほどの大問題に発展しつつある。東京では都議会の百条委員会で豊洲問題をめぐる暗闇の一端が明らかになりつつあるが、大阪の森友学園問題もそれに劣らない破壊力を秘めている。これからも注視していきたい。(つづく)