「喧嘩両成敗」でなければ国民の納得は得られない、籠池起訴で「森友疑惑」の幕を引けるなんて思わないことだ、国民世論は「脱安倍」へと着実に向かい始めた(18)、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その49)

昨日、3月30日の各紙が一斉に伝えたところによると、学校法人森友学園が小学校校舎の建築費に関し、国や大阪府などに異なる金額の工事請負契約書を提出していた問題で、籠池理事長に対する補助金適正化法違反容疑での告発状が四国地方の個人から大阪地検特捜部に提出され、地検特捜部が29日に受理したことが分かったという。

 森友学園補助金申請や設置認可申請に当たり、国交省に付随工事を含め23億8400万円、大阪府に7億5600万円、伊丹空港の運営会社には15億5000万円と、金額の違う3通の契約書をそれぞれ提出し、国交省は契約書に基づき、2015年度に6194万円の補助金交付を決め、これまでに5600万円余が支給された。

 補助金の提出先が違えば建築工事費が異なるなんて、それが「オカシイ」ことは建築屋でなくても誰でもわかることだ。籠池理事長が国会の証人喚問で刑事訴追のおそれがあるから証言を拒否したのはそのためだろう。それにしても、国や地方の役所に対して同一建築物の工事費を7億円台から23億円台に変えるなんて、いったい誰が考え付いたのだろう。それが籠池理事長の個人的な思い付きによるものか、それとも誰かが入れ智恵したことによるものか、この際、大阪地検特捜部は名誉にかけてその背景を徹底的に明らかにしてほしい。

 それでは、なぜタイミングよく告発状が提出され受理されたのだろう(通常は受理されない場合が多い)。考えられるのは、籠池理事長の国会証人喚問 → 偽証罪告発 → 訴追といった一連の流れが安倍政権の予定シナリオだったが、その後、偽証罪での告発は難しいということになり、代わって補助金不正受給の疑いで取り調べることになったのではないか。大阪府の松井知事も同様の告発を準備しているというから、これからは証人喚問に代わって籠池理事長に関する捜査ニュースが前面に出てくるかもしれない。

 事実、籠池理事長はどこを叩いても「ホコリが出る身体」だと言われている。この他にも芋づる式に続々と罪状が出てくるかもしれず、そうなるとその都度、取り調べの中身が意識的にリークされて各紙の紙面を大きく占めると言った事態も予想される。マスメディアや国民の関心が籠池理事長の方に流れると、安倍政権はそれだけ助かることになるので窮地を脱することもできるとの憶測が流れているのもそのためだ。今回の告発もそれが目当てかもしれない。

 だが、籠池理事長の刑事起訴で「森友疑惑」の幕引きは終わらないし、終わらせてはいけないと思う。仲間割れした一方の相手だけを悪者に仕立て上げ、それに加担した安倍首相夫人が安全地帯でノウノウとしている(疑惑発生後も全国を飛び回って笑顔を振りまいている)ことなど許されないことだ。また、フェイスブックに書き込んだだけで如何にも「反論」したように吹聴することも、アンフェアでルールに反することだと言わなければならない。

 古来、わが国には「喧嘩両成敗」という言葉がある。現代法理からすれば、喧嘩の原因を確かめず、双方の正当性の検証もしないで「両成敗」することにはいささか無理があると思うが、今回の「森友疑惑」の場合は双方に責任があることは明白なのだ。籠池理事長が加害者で安倍首相夫人が被害者だというような関係ではなく、明らかに両者は共同関係にあったのである。なにしろ安倍首相夫人は新設予定の「名誉校長」に就任し、籠池理事長は校長に予定されていたのだから、両者はまさに「一心同体」の関係だったといっても過言ではない。それが国有地のタダ同然の払い下げにつながったのだとしたら、両者は「共犯関係」にあったと疑われても仕方がないである。

 安倍政権がここまで強気なのは、内閣支持率がそれほどまでに下がらず、「森友疑惑」で白を切り通してもまだまだ政権を維持できると事態を甘く見ているからだろう。しかし、国民を舐めてはいけない。当初は些細なスキャンダルが権力側の隠蔽によって大事件となり、政権崩壊の引き金になったことは枚挙の暇もないのである。まして、今回の「森友疑惑」は些細なスキャンダルなどでは毛頭なく、国民の財産である国有地を掠め取ろうとした悪質極まる政治犯罪なのだ。それに加担した双方が平等に罰せられないとなれば、「法の下の平等」という現代法理の大原則が崩れることにもなりかねない。

 法治国家の権威と秩序が維持できなければ、資本主義社会といえでも体制を維持することはできない。企業倫理と会計秩序を無視した東芝が崩壊寸前に苦境に立たされているように、政治倫理と法秩序を無視した関係者の一方が無傷で終わるようなことになれば、政府の権威と支配秩序は崩壊する。安倍首相夫人はもとより財務官僚が結託して加担した今回の「森友疑惑」は単なる刑事事件などではなく、「国家犯罪」ともいうべき大疑獄事件なのである。

 「喧嘩両成敗」でなければ国民は納得しない。安倍政権は自らを罰することなしには「森友疑惑」に終止符を打てないのである。(つづく)