シリア攻撃で支持率上昇を狙ったトランプ大統領、それに便乗しようとした安倍首相、内閣支持率はこれからどうなる、国民世論は「脱安倍」へと着実に向かい始めた(20)、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その51)

 NHKは4月11日夜のニュースウェブで、トランプ大統領がシリアのアサド政権に対して下したミサイル攻撃に関する世論調査の結果を伝えた。アメリカのABCテレビと有力紙のワシントン・ポストが4月10日に発表した全米世論調査の結果は、シリア攻撃「支持」50%、「反対」40%というもの。一方、アサド政権に対して追加の攻撃を行う場合は「支持」35%、「反対」54%というより厳しい結果だった。また、今回のミサイル攻撃がアメリカとアサド政権の後ろ盾となっているロシアの関係を「悪化させる」と思う人は59%に上った。

 4月12日付の赤旗も10日発表の米ギャラップ社の世論調査結果を伝えている。ギャラップ社は、トランプ米政権による4月6日のシリアに対するミサイル攻撃に関する世論調査を7、8両日に行い、結果は「支持」50%、「不支持」41%だった。これだけだと「支持」が「不支持」を上回っているのでトランプ大統領の決断が全米で支持されているような印象を与えるが、同社の解説によると必ずしもそうではないらしい。

 アメリカの海外軍事行動は1983年のグレナダ侵攻以来11を数えるが、これらの中でも今回のシリア攻撃は2011年のリビア攻撃(支持47%、不支持37%)に次ぐ「歴史的な(支持の)低さ」だという。過去、最も支持を得たのは、9・11同時多発テロ後の報復行動として行われたブッシュ大統領によるアフガニスタン戦争の「支持」90%、「不支持」5%であり、2011年のリビア攻撃を除けばいずれも過半の支持を得ている。

 米CBSテレビの世論調査(4月7〜9日実施)でも、69%がトランプ大統領は攻撃にあたって議会承認が「必要」だったとし、「必要なかった」としたのは25%に止まった。また、米国がシリアでどこまで関与すべきかとの質問に対しては、「空爆のみ」30%、「外交対話のみ」(軍事行動はこれ以上しない)26%、「地上部隊による軍事関与」18%、「全く関与しない」15%という結果になった(赤旗、同上)。

ギャラップ社の世論調査では、このところトランプ大統領支持率は40%台半ばあたりを上下していたが、3月21日には支持率37%、不支持率58%と1月下旬の就任以来最低の水準にまで落ち込んでいた。同社は、支持率下落の原因は医療保険制度改革オバマケア)の撤廃に向けて共和党が提示した法案や、裁判所からの反対に直面している入国禁止令などに対する国民の不満を反映していると分析している(CNNニュース、2017年3月21日)。トランプ大統領は今回のシリアにおける化学兵器使用問題を、国民の目を「ならず者国家」に向けさせる好機と踏んだのだろう。それを低支持率の泥沼から這い出すための千載一遇の機会と捉えたのだろう。

 だが、アメリカの世論は意外にも冷静で、トランプ大統領もその結果に衝撃を受けたのではないか。トランプ大統領の目論見としてはシリア攻撃で圧倒的な支持を獲得し、その勢いを駆って北朝鮮に脅しをかけるというシナリオを描いていたに違いない。それが大きく狂ったのだから、目下、空母艦隊など使って展開している朝鮮半島周辺の軍事作戦をそのまま続行することは難しくなるだろう。

 一方、シリア攻撃に対して即刻強い支持を表明した安倍首相の目論見はどのようなものだったのだろうか。トランプ大統領によるシリア攻撃は、安倍首相にとっても「森友疑惑」から抜け出す千載一遇の機会だと把握されていたに違いない。なにしろ朝な夕なに茶の間の話題になる「森友疑惑」は、もはや安倍政権の「喉に刺さった骨」と化しており、安倍首相夫妻を悩ませ続けてきたからだ。幕引きを図ろうとしても世論がなかなか許してくれない。ならば、時間をかけて沈静化させる以外に方法がないと思っていたところへ、飛び込んできたのがアメリカのシリア攻撃だったのである。

 かねがね北朝鮮の脅威を強調して国内世論を操作してきた安倍政権にとって、これほどの好機はない。アメリカのシリア攻撃は、安倍政権にとっては「森友疑惑」から国民の目をそらす前項の機会(神風)であり、かつシリア攻撃に乗じて北朝鮮批判の世論をさらに高め、一挙に軍事力増強を実現する一石二鳥の機会が訪れたというわけだ。それはまた、低下し始めた内閣支持率を回復させるために、政策の重点を内政問題から外交問題に転換させる一大契機としても認識されているに違いない。

 だが、目下テレビ番組で連日報じられている4月27日のアメリカによる北朝鮮爆撃の噂がガセネタであることがわかれば、アメリカの世論と同じく国内世論も一挙に冷静さを取り戻すことになるだろう。そのときにシリア攻撃に乗じて北朝鮮の脅威を煽った安倍政権の内閣支持率はどう変化するのだろう。次回あるいは次々回の世論調査結果が待たれる。(つづく)