安倍政権の終焉を告げる都議選の歴史的大敗、都民に審判されたのは自民党東京都連ではなく安倍政権そのものだった、国民世論は「脱安倍」へと着実に向かい始めた(37)、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その68)

 全国注目の的、東京都議選が2017年7月2日投開票され、自民党が歴史的大敗を喫した。候補者60人を擁立して安倍首相をはじめ総力戦で臨んだ自民党は、過去最低の38議席を大幅に下回る23議席(現有57)に止まり、都議会議長や都議会自民党幹事長の現職幹部が揃って落選した。各紙の見出しが単なる「大敗」や「惨敗」ではなく、「歴史的大敗」「歴史的惨敗」とあるのはそれを示すものだ。戦後の都議選史上かってない自民党の大敗北であり、「空前」(絶後ではない)の出来事が起こったのである。

 公明党と選挙協定を結んだ「都民ファーストの会」が55議席(現有6)と圧勝し、公明党が全員当選の23議席(現有23)を確保したことも驚きだった。そんな嵐のような選挙情勢の中で、民進党が5議席(現有7)に後退したのに比べて、共産党が19議席(現有17)に前進したことは特筆される。野党第1党の民進党が首都東京でかくも振るわないようでは、今後、政党としての存在意義を問われることにもなりかねない。

 今回の都議選が安倍政権の審判選挙になったのは、幾つかの理由がある。第1は、都議選の日程を睨んで国会が理不尽にも閉会され、森友疑惑や加計疑惑の隠蔽はもとより、「共謀罪」の本会議採決が法務委員会の審議をすっ飛ばして強行されたことだ。国権の最高機関である国会審議が、安倍政権の私的思惑(国政私物化)によって蹂躙されたのである。国会閉会中にも新しい問題が出てくれば審議に応じるという安倍首相の口約束はその後、加計疑惑に関する萩生田発言など新資料が出てきたにもかかわらずにあっさりと反故にされた。憲法53条に基づく野党の臨時国会開会要求も握りつぶされ、何時になったら国会が開催されるか現在は目途も付かない。「安倍政権の横暴ここに極まれり」といった事態が国民の前に立ちはだかるに及んで、自公与党が国会での審議に応じないのであれば、都議選で決着付ける他はないとの空気が広がり、それが安倍政権に対する厳しい審判となったのである。

 第2は、豊田真由子議員(安倍チルドレン)による秘書への罵詈雑言や暴行事件、稲田防衛相(安倍首相の秘蔵っ子)の『自衛隊防衛大臣自民党としてもお願いする』との憲法違反発言、そして下村自民都連幹事長(安倍首相側近、自民党幹事長代行)に対する加計学園からの〝闇献金〟騒動など、安倍グループによる不祥事件が都議選の最中に連続して暴露されたことがある。自民党は離党しても国会議員は辞めないでほとぼりが冷めるのを待つ(豊田氏)、憲法違反の発言をしても大臣を辞任することもなければ、罷免されることもなくそのまま居座りを続ける(稲田氏)、加計学園から献金を受け取ったことを認めながら〝闇献金〟であることは否定する(下村氏)など、安倍グループの厚顔無恥の面々に対して鉄槌を下さなければならないとの都民感情(国民感情)が一気に強まったのである。

 都議選の歴史的大敗後、事態を打開すべく与党側からは国会閉会中の委員会開催や臨時国会開催の話も出ている。しかし、森友疑惑や加計疑惑はもともと安倍首相の「お友達関係」による国政私物化の典型であるだけに、丁寧に議論をすれば国民の納得を得られるような類の案件ではない。議論すればするほど疑惑が深まり、安倍政権はますます泥沼に足を取られるだけのことであって、審議に応じればことが解決するような簡単な話ではないのである。おそらく「審議に応じる」といった話は当座の時間稼ぎのための口実に過ぎず、残された手段は、内閣改造(首にすげ替え)による「印象操作」しかないのではないか。

 問題は、内閣改造が成功するかどうかだ。新しい政策を打ち出すに当たってそれにふさわしい清新な閣僚を起用するというのが通常の姿であるが、今回の場合はそれとは根本的に違う。あまりにもお粗末な側近や閣僚を一掃するには大ナタを振るわなければならず、場合によっては「手術が成功しても患者が死んでしまう」ことになりかねないからだ。改造ポストは、都議選の歴史的大敗の戦犯である「THISグループ」(T=豊田議員、H=萩生田副官房長官、I=稲田防衛相、S=下村幹事長代行)をはじめとして、共謀罪でデタラメ答弁に終始した金田法相、加計疑惑隠しに走った山本地方創生担当相、公文書隠蔽に躍起となった松野文科相など枚挙の暇もないが、これら不良閣僚の摘出手術のためには相当な出血を覚悟しなければならない。

 だが、内閣改造で事態を収拾できるかどうかは予断を許さない。最大の問題は、内閣改造を断行しても肝心の「頭のすげ替え」だけはできないことだ。安倍首相自身が都議選大敗の元凶である以上、頭のすげ替えをしない限り内閣改造は成功しない。言い換えれば、「内閣総辞職」でもしない限り事態は根本的に収集できないということだろう。これは、安倍首相自身にとっても受け入れがたいことであるに違いない。だから、都議選後の事態収拾は長引くほかはない。臨時国会の開催もしない、丁寧な審議もしないし説明責任も果たさない、内閣改造はするがそれで目先が変わるほどの期待もできない...。安倍政権はいまや完全に行き詰まっている。

小泉進次郎氏の入閣や橋下徹氏の起用なども噂されているが、彼らの起用如きで事態が変わるほど国民は馬鹿でないし、安倍政権の信頼が回復できるほどの効果も期待できない。それほど安倍政権の体質は腐っているのであり、信頼は地に堕ちているのである。さて、安倍首相はどうする。次の一手に関心がそそられる。(つづく)