番外編、『ねっとわーく京都』コラム執筆のこと、身辺雑話(1)、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その124)

8月上旬以来、1ケ月以上にわたって拙日記を休筆していた。猛烈な暑さ続きでダウンしたのと、これまで関わってきた諸活動が夏休み中に急展開を見せ、その対応に忙殺されていたためだ。おまけに関西を襲った台風21号で我が家の屋根も思わぬ損傷を受け、応急措置に駆けまわっていたことも忙しさに輪をかけた。書斎に座って考える暇もなく、気が付いてみると前回からもう1カ月以上も経っていた―というのが偽らざる実態なのだ。そんなことで気分転換も兼ねて、ここ数回は連載してきたテーマから少し離れて身辺雑話に話題を移すことにした。つまらないと感じられる方も多いと思うが、1高齢者が毎日どんな日々を過ごしているか、その一例として読んでいただければ幸いである。

私の諸活動は大別して、(1)執筆活動、(2)研究活動、(3)社会活動に3区分される。3つの活動は「三位一体」ともいうべき関係にあり互いに分かちがたいが、ここでは一応区分けしてその内容を記すことにしたい。まず、このところ執筆時間の大半を占めているのが、京都の月刊誌『ねっとわーく京都』(1990年12月創刊、2018年10月現在通巻357号、発行部数約2千部)に連載しているコラム執筆である。毎年8月号は大学特集で連載物は休止なので、年11回、原稿用紙20枚程度の長いコラムを毎月書いていることになる。コラムの連載は2011年2月号から始まっているので、最新号の2018年10月号で88回目になる。結構長く書いていることになるが、編集長が何にも言わないで自由に書かせてくれるところをみると、何とか首がつながっているのだろう。

 コラムのテーマは時事評論で多岐にわたるが、2017年4月からは「インバウンド(外国人旅行者)問題」に絞って連載している。国際文化観光都市・京都にとっては、大阪のように「インバウンド大歓迎」一色とはいかない。「オーバーツーリズム」(観光公害)の弊害が目に見えて激化しており、このままでは京都の魅力が失われてしまう恐れがあるからだ。京都市も当初は外国人訪問客の増加を大歓迎していたが、最近では「ヤミ民泊」の横行もあって少し態度を変えてきている。持続可能な観光都市であり続けるためには、インバウンドを適度の水準に抑えることが必要――との認識が漸く浸透してきたのである。

また京都市は、全国でも出生率が最も低い大都市である。とりわけ清水寺祇園がある東山区では、全国市区町村の中で最下位の0.7台(人口再生水準の3分の1)まで低下している。インバウンドが増えるほど非正規雇用が増え、それが出生率を生存以下のレベルまで押し下げている―、というのが私の分析結果だ。京都市出生率を回復させ、市人口を一定水準に維持できなければ京都が危ない、そのためには持続可能な観光業を確立しなければならない、これが私の問題意識である。以下は、コラムの見出しである。

≪2017年4月〜12月≫
〇「インバウンド旋風が吹き荒れている」(4月号)
〇「呼び込み観光は東山区を荒廃させる」(5月号)
〇「民泊バブルは現代の黒船来襲なのだ」(6月号)
〇「全国最下位出生率から脱出が課題」(7月号)
〇「京都はスローな成熟都市なのです」(9月号)
〇「地方創生に期待できますか」(10月号)
〇「〝たられば〟では人口減少に歯止めがかからない」(11月号)
〇「死亡が出生を上回る都市に未来はあるか」(12月号)

≪2018年1月〜現在≫
〇「希望から現実へ、出生率を上げるには」(1月号)
〇「少子化が〝国難〟なら、2兆円パッケージは少なすぎる」(年2月号)
〇「京都市出生率、なぜ低い」(年3月号)
〇「門川市長も危機感、京都観光業の雇用実態」(4月号)
〇「民泊新法施行でヤミ民泊はどうなる」(5月号)
〇「民泊はもはや供給過剰、飽和状態なのだ」(6月号)
〇「〝オーバーツーリズム〟の危険が現実化している」(7月号)
〇「京都は〝インバウンド総量規制〟が必要だ」(年9月号)
〇「民泊新法ビフォーアフター」(10月号)

連載コラムは京都市関係者にも読まれており、市が観光政策を考えるうえで一定の影響を与えている(と思いたい)。目下、関西のインバウンド状況は大変動している。台風21号が関西空港を襲い、高潮で空港施設が沈没し、連絡橋がタンカーの衝突で大破された。大阪はもとより京都でも外国人旅行者が激減しており、おまけに北海道胆振東部地震が重なって、北海道の観光業がピンチに陥っている。

安倍首相は、2020年東京オリンピックまでに年間4000万人の外国人旅行者数を急増させると豪語し、進行中の自民党総裁選挙においても地方創生のカギは観光立国にあると繰り返し強調している。だが、災害列島日本において災害予防対策を十分に講じることなく、ただ特大の数字目標を掲げてインバウンド誘致に突っ走ることのリスクは、今回の台風や地震で余すところなく暴露された。この教訓をどのように生かすのか、日本各地の観光業はいま大きな試練にさらされている。(つづく)

※追伸
 この間、沢山の充実したコメントをお寄せいただいた諸氏にお詫びします。掲載を怠り、折角のご意見の掲載が遅れてしまいました(9月17日に掲載しました)。このようなことが二度とないよう注意します。広原盛明 拝