参院選京都選挙区の候補者擁立をめぐる立憲民主党と国民民主党の暗闘、統一地方選と参院選を控えて野党共闘はどうなる(3)、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その143)

 連合が立憲民主党(立民)と国民民主党(国民)に対して、次期参院選に向けた連携の覚書を交わすための折衝を続けていたちょうどその頃、毎日新聞(京都版)は10月24日、「国民 前原氏秘書擁立へ、参院選 立民との調整決裂」と立民・国民両党の決裂をすっぱ抜き、国民候補の擁立を伝えた。国民京都府連は10月23日、松下政経塾出身の前原氏秘書・斎藤氏(会社員、33歳)の擁立を決定し、24日に党本部が公認決定した。

 同紙によれば、国民京都府連幹部は「今月(10月)上旬に府連として候補者を決定した後も(立民と)調整を続けたが折り合えなかった」と説明し、別の幹部は「単独候補を擁立するなら選挙まで時間がないので決定した。今後も一本化に向けた話し合い自体は続けたい」とも話している。国民京都府連はその後10月26日に候補者擁立を公式発表し、連合京都もこの日に開いた地方委員会で国民候補の推薦を報告した。連合京都は7月以降、立民・国民両党に候補者一本化を求めてきたが、10月の期日までに候補者を決定したのは国民だけだったので、国民新人を唯一の推薦候補に決めたというのである。

 連合京都会長は地方委員会の席上、国民候補の推薦について「5年前、共産党に渡してしまった議席を奪還するためにも、連合京都は一本化でないといけない」と強調し、現時点では国民候補を唯一の推薦候補として戦う方針に理解を求めた。神津連合会長も出席し、「野党が力を合わせる姿とともに候補者擁立が進まないと、国民には一強政治打破への実感がわかない」と挨拶し、「参院選まで8カ月しかなく、京都の決断は極めて大事」と激励した(京都新聞2018年10月27日)。

 これに対して、委員会に来賓として出席していた立民京都府連会長の福山幹事長は、「大変残念な結果になったと言わざるを得ない。立憲は京都の野党第一党であり、国民に選択肢を示すのが政党の責務。なんとか選挙区の候補を擁立したい」と反発した。立民は京都選挙区での候補者擁立を進めるとともに、連合京都に対しては立民と国民民主党の双方に推薦を求めてきたからだ(同上)。

 察するに、神津連合会長は中央レベルで立民・国民の連携工作を進めてはいるが、立民側の煮え切らない状況を打開するため、京都で国民単独候補の推薦に踏み切ったのであろう。だが、その意向は立民に通じなかった。福山幹事長は11月18日の立憲民主党京都府連の設立大会で、「立憲は昨年衆院選の京都で共産党を上回る比例票を得た。選択肢を示さないのはあり得ない。年末までに候補者を発表したい」と独自候補を擁立する考えを強調したのである(京都新聞2018年11月19日)。

 そしてそれから1カ月近く経った12月12日、立憲民主党は次期参院選京都選挙区においてLGBT支援活動に取り組む増原氏(女性、40歳)の擁立を決め、福山幹事長が増原氏と同行の上、連合京都に対して推薦を求めた。16日には枝野代表の同席のもとに公式発表するとした(朝日新聞2018年12月13日)。

 12月16日に京都入りした枝野代表は記者会見を開き、野党各党との連携のあり方などについて改めて立憲民主党の態度を表明した。以下はその要旨である(京都新聞12月18日)。
(1)京都選挙区での候補者擁立について。「京都には福山幹事長(参院議員)、
山本衆院5区支部長(衆院比例北陸信越)がいて全国の中でも足場が強く、最良の候補者も決まった。これで勝てなければ他の選挙区では厳しい。確実に取りにいく」
(2)国民民進党と戦うことについて。「別々の道を歩んで、別々の党である以上、複数区では野党が切磋琢磨しないと自民党一強を変えられない。どこにあっても複数区では立てていく」
(3)政権獲得に向け、他党との連携や合流の在り方について。「大事なことはぶれないこと。有権者は『政党の離合集散』を『選挙目当てで理念政策を曲げること』だと受け止めている。昨年の(旧民進党が旧希望の党に合流した)課程で学んだ。従って、他党との合流や合併、再編にはくみしない」
(4)二大政党制下での政権交代可能な大きな塊について。「小選挙区制が二大政党化を促すといわれたが、制度導入後の政権はすべて連立政権だ。立憲単独政権は望ましいが、それよりも各党の違いを国民に示しつつ、連携する時は連携したい」
(5)参院選1人区で野党統一候補の擁立を呼び掛けている共産党を連立政権に含めることについて。「安倍政権に対する中間評価として一騎打ち構図をつくるため、1人区では野党の一致を目指しているが、政権を共有することとは全く違う次元の話だ。(連立に向けては)現段階で予断を持って話すべきではない。ただ、わが党は理念政策の筋は曲げない。自衛隊は合憲で日米安保は堅持、(象徴天皇制を定める)憲法1条もこのままでよいと思っている」
(6)政権交代の時期について。「民主党政権時代、多くの議員が初めて政権運営を経験し、どんどん慣れていく過程を見てきた。再び経験のない者が一からやると混乱する。だから、あの時に政権中枢を担っていたメンバーが最前線で仕事をしている間に政権をとらないといけない」

 このインタビューでは、枝野代表の野党共闘に関する意見およびその背景にある政権構想についての考え方がよく出ている。この調子では立民と国民の候補者一本化はありえず、自民党及び共産党の現職と対決する激戦となるが、その行方についても考えてみたい。(つづく)