京都市長選で自民・公明・立憲・国民・社民5党が〝オール共闘体制〟国政と地方政治は違うという究極のご都合主義、安倍内閣支持率下落と野党共闘の行方(11)、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その188)

 新春早々、残念なブログから始めなければならない。国政では立憲・国民間の合流協議がいまや破綻寸前だというが、京都市長選では国政では烈しく対決しているはずの自民・公明(与党)と立憲・国民・社民(野党)が、与野党を超えた〝オール共闘体制〟を組むという全国でも珍しい光景が展開している。1月19日の京都市長選告示日を1週間後に控えた一昨日の12日、国立京都国際会館のホールで門川氏(現職候補)の4期目当選を目指す「未来の京都をつくる会・総決起大会」が開かれた。私は後学のため門川陣営の選挙資料の収集もかねて見学に出かけたが、そこで見た光景は想像を遥かに超えるものだった。

 

 会場に入ってまず驚いたのは、2000人を超える参加者のほとんどが中高年男性で占められ(黒一色の光景!)、女性が1割にも満たなかったことだ。有権者の過半数(京都市では53.3%)が女性なのに、それが1割にも満たない選挙集会なんて今まで見たことも聞いたこともない。考えられる理由は2つだ。1つは自民党の支持基盤である地域婦人連合会(現在は地域女性連合会)が高齢化し、若い女性たちが会に入らなくなったのでもはや動員が利かなくなったこと。もう1つは、公明党選挙部隊の中核である創価学会婦人部の姿が見られなかったことだ。

 

 会場の空気の盛り上がりもいま一つだった。壇上の弁士たちは熱弁をふるうのに拍手は少なめで、掛け声は前方に陣取った選挙要員だけで後が続かない。選挙戦が本格化していないこともあるが、これでは門川選挙本部も少し不安を覚えたのではないか。そうでなくてもここ3回の市長選投票率が40%を切っているというのに、この調子では支持者たちが投票に行ってくれないかもしれないからだ。

 

 壇上の面々の陣容にも驚いた。数十人の支持政党や業界団体の代表がズラリと並び(ここでも女性ゼロ)、最前列には西田自民党府連会長(参院議員)、竹内公明党府本部代表(衆院議員)、前原国民民主党府連会長(衆院議員)、福山立憲民主党幹事長(参院議員)、伊吹元衆院議長(自民、衆院議員)などが勢揃いなのだ(社民党は国会議員がいない)。この5人と連合京都会長が代表して決意表明したが、それぞれの立ち位置と関心事があらわれていて面白かった。以下、私のメモをもとに簡単に紹介しよう。

 

 西田氏(自民)や竹内氏(公明)をはじめ、前原氏(国民)や福山氏(立憲)も異口同音に強調したのは、投票率の低下によって現職候補の票が減ることの危険性だった。その背景には、門川氏が当選した過去3回の市長選はいずれも市長与党会派である自民・公明・(旧)民主・社民4党が財界や業界団体、町内会団体などと共に「オール京都体制=市役所利益共同体」の選挙母体を組み、連合京都の組合員や創価学会会員などを総動員して戦われてきたことがある。

 

一言で言えば、彼らが勢揃いして市長選を戦うのは、投票率が低下して門川氏が落選すれば与党会派の連合軍が「市役所利益共同体」のうまい汁をいつまでも吸い続けることができなくなるからである。だから、彼らにとって現職候補の多選は弊害どころなどではなく、「多選」は利益確保のための不可欠の条件なのである。市役所利益共同体を維持するために「多選=従来体制の維持」にこだわり、勢揃いで選挙戦を戦うのはそのためだ。しかし、有権者を前にこんなことを有体に言うわけにはいかないので、表向きは各党各様の発言となる。

 

竹内公明府本部代表は、与野党を超えて市長選を戦う理由を次のように言う。「地方分権の時代に中央のイデオロギー抗争を持ち込む方がおかしい。地方政治は住民の福祉向上のためにある」(京都新聞2020年1月13日)。しかし、こんな子供だましの言い分を信じているのは創価学会信者ぐらいのものだ(最近は少なくない信者が離反していると聞く)。目下、国政の争点となっている原発再稼働、消費税増税、オーバツーリズムや観光公害、沖縄軍事基地拡充などは、全てが安倍政権の中央イデオロギーがそのまま地方政治に持ち込まれた結果であり、地方自治・地方分権を踏みにじっている政治現象そのものではないか。

 

 前原国民民主党府連会長は別の理由を上げる。「門川市長に立候補を要請したのは旧民主党で、製造者責任がある。安定のため一部の党を除きオール与党化するのはどの自治体でもあり、批判には丁寧に説明していく。ポイントは多選の是非だが、党の市議の評価を尊重する」(同上、1月12日)というものだ。だが、旧民主党が門川市長を推薦した本当の理由は、長年にわたって京都市政を蝕んできた同和行政をめぐる利権を維持するためだったのではないか。旧民主党や連合京都が部落解放同盟の要求実現団体として終始活動してきたことは紛れもない事実であり、そのことが旧民主党が国民民主党と立憲民主党に分裂したいまでも、彼らが「オール与党」の1員として活動している最大の理由でもある。

 

京都市の有権者数は、2019年12月現在117万2千人(男性54万7千人、女性62万5千人)、投票率35%だと41万票、40%だと46万9千票になる。過去3回の門川氏の得票数・得票率は、2008年15万8472票(36.7%)、2012年18万9971票(45.3%)、2018年25万4545票(62.5%)と回を重ねるごとに票を伸ばしてきた。この調子だと今回も大丈夫だと考えても不思議ではないのに、今回の市長選は「かってないほど厳しい」としきりに言うのはなぜか。選挙告示日が間近にせまっているので、次回以降は毎日掲載する。(つづく)