野党3党は内閣不信任決議案を突き付けるというが、その先はどうなる? 菅内閣と野党共闘の行方(28)、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その253)

 

 新型コロナ再拡大と国会での与野党対決の激化が同時進行している。関西では大阪と兵庫で新規感染者数が激増し、京都にもいよいよ影響が及んできた。2月末に緊急事態宣言が解除されてからというもの、関西では花見シーズンとあって人出が尋常ではない。伏見稲荷大社からそれほど遠くない場所に住む私の周辺でも、最近は目に見えて人が増えてきている。テレビニュースで見たが、桜満開の大阪城公園などは物凄い人出でごった返しの状態だった。先日も自分の目で確かめてみたいと思って、男山八幡宮の近くの木津川、宇治川、桂川が合流する花の名所(淀川背割堤の桜)に行ってみたが、結構な人出で驚いた。飲食禁止、一方通行などの掲示が至る所に貼られ、誘導員も多数配置されていたが、それでも何となく不安を感じるような有様だったのである。

 

 3月30日に発表された大阪府の新規感染者数432人は衝撃的だった。この日364人だった東京都を3月28日に続いて大きく上回り、全国最多となった。大阪府内で1日あたりの新規感染者が400人を超えるのは、緊急事態宣言が発令されていた1月24日(421人)以来のこと、前週火曜日(3月23日)の183人に比べて倍以上の増え方だ。吉村大阪府知事は、緊急事態宣言の「前倒し解除」を強引に推進したことなど棚に上げ、自らの失策は絶対に語らない。次から次へと施策を小出しにして「やった感」を演出することで点数を稼ぐのが得意だ。今回も「まん延防止等重点措置」を連呼すればその場をしのげるとでも思っているらしい。(言うだけの)大阪維新代表の面目躍如というところだろう。

 

 それにしても、会食時の飛沫を防ぐと称して「マスク会食」を義務づけることが「まん延防止等重点措置」の対策というのだから、呆れてものが言えない。「マスク会食」は菅首相の〝専売特許〟ではないか。菅首相が発言した瞬間から国民の不評を買い、早々に引っ込めた世紀の愚策を周回遅れで持ち出すなど、吉村知事も万策尽きたようだ。こんな人物に大阪を任せていたらとんでもない所に連れていかれる。大阪維新に酔いしれてきた大阪府民もそろそろ目を覚ますときではないか。

 

 一方、国会では立憲民主党など野党3党の国対委員長が3月30日会談し、菅政権の新型コロナ対策の責任を追及するとして、内閣不信任決議案の提出準備に入ることで一致したという。安住氏は、記者団に「第4波を防げなかったり、ワクチン接種がうまくいかなかったりした場合は内閣総辞職に値する。そのために取り得る行動は躊躇(ちゅうちょ)なく取っていく」と述べた。これに対して、自民党の二階幹事長も3月30日の記者会見で「大いに結構だ。受けて立つ」と述べ、野党が不信任案を提出した場合、政権側が衆院解散に打って出る姿勢を示した(各紙3月31日)。

 

 これだけ見ていると、野党3党の姿勢はいかにも勇ましいが、問題は「それから先はどうなる?」かだ。単なる不信任決議案の提出なら、否決されるだけで終わってしまう。それを次の総選挙に向けての野党共闘のバネにしなければ、不信任決議案の意味がない。ところが、こちらの野党共闘の方はいっこうに進展を見せないのである。むしろその機運は遠のいていくような感じさえする。それを象徴するのが、4月25日投開票の参院長野補選を巡る一連の騒動だ。

 

 立憲民主党新人候補の羽田次郎氏は今年2月、共産党長野県委員会や市民団体と「原発ゼロ」や「日米同盟に頼る外交姿勢の是正」を明記した政策協定を結んだ。ところが、これに反発した民間産業別労働組合(産別)の意を受け、(というよりは先頭に立って)神津連合会長が「協定潰し」に動いたのである。言うまでもなく、神津連合会長は「共産党との共闘はあり得ない」とする根絡みの反共主義者(労働貴族)である。神津氏はまた、旧民主党代表の前原氏や小池都知事と組んで「希望の党」を立ち上げ、民主党を分裂させた張本人でもある。彼らに「排除」された枝野氏らが立憲民主党に活路を見いだし、辛うじて政治生命を保ったことは記憶に新しい。

 

 ところが、こともあろうに枝野立憲民主代表は3月17日、神津会長と連合本部で会談し、立民新人の羽田次郎氏が共産党などの県組織と結んだ政策協定について「(立憲)長野県連で軽率な行動があり、連合に迷惑をかけた」と謝罪したのである。いまや世界の常識になっている「原発ゼロ」の政策を棚に上げ、連合長野と羽田氏が交わした確認書で以て、共産などとの協定を「上書き」して「原発ゼロ」の政策を消したのである。「節操のない人物」とは、枝野氏のような人間のことをいうのではないか。票欲しさに立憲民主党の基本政策を曲げてまで労働右翼にひれ伏す―、これではとても野党第一党の党首とは言えないだろう。

 

 菅政権は、身内の接待問題といい、総務省閣僚や幹部の腐敗といい、新型コロナ対策の失敗といい、今や満身創痍だ。また、それを支えている自民党は、二階幹事長に代表されるような腐臭漂う利権集団の塊だ。それでいて、菅政権の内閣支持率は40%台で下げ止まり、立憲支持率は数パーセントのレベルで低迷している。理由は明らかだろう。立憲民主党が連合や国民民主党に引きずられ、国民が期待する政策を打ち出せず、国会でもあいまいな妥協を繰り返しているからである。

 

 それどころか、こんな記事が大手紙の政治欄に載る始末だ(毎日新聞3月30日)。まるで、立憲民主党に民主党時代への先祖帰りを促しているようではないか。

―国民に議員を輩出する民間労組には、「立憲の政策はリベラルに寄りすぎだ」との不信感がある。立憲は次期衆院選で国民や共産を含めた野党共闘を目指すが、国民幹部は「共産、民間労組の双方にいい顔する立憲の『曖昧路線』は限界だ。『共産離れ』をしないと、民間労組は立憲を支援しづらい」と指摘する。立憲の泉健太政調会長は3月中旬、旧国民時代に同僚だった議員に「スタンスを変えずに一緒にやっていこう」と連携を呼びかけ、共闘に腐心している―

 

京都は国民民主党の牙城だった。それが立憲民主党との合流をめぐって前原グループと泉グループに分かれた。それでも両氏らの行動にはさほどの違いは見られない。名前を変えただけで「中身は同じ」なのだ。こんな人物が立憲民主党の政策責任者になっているのだから、国民民主党の政策と一体どこが違うのか見分けることが難しい。

一方、共産党の機関紙「あかはたしんぶん」には、立憲民主党や枝野批判の記事は滅多に載らない。「自共対決」一点張りだったのが、こんどは「野党共闘」一点張りに豹変したのである。私の周辺では、「共産党は立憲民主党の〝下駄の雪〟になった」との噂が飛び交っている。公明党が自民党の「下駄の雪」から「下駄そのもの」に変質してからもう大分経つが、このままで行くと、今度は「共産党、おまえもか!」ということになりかねない。どこかで立ち止まらないと、野党共闘はなし崩しで消えてしまう―、こんな心配をオールドリベラリストの面々は心配しているのである。(つづく)