岸田政権の大軍拡・大増税路線の裏にあるもの、日本維新を含めた〝保守大連立構想〟が幕を開けた、岸田内閣と野党共闘(その30)

12月10日臨時国会が閉会した。岸田首相は、旧統一教会被害者救済法の会期内成立にこぎつけてひとまず安堵しているという。3閣僚の相次ぐ「辞任ドミノ」で崩壊寸前だった岸田政権が、これで何とか年を越せると言うのだから政界とは不思議な世界だ。内閣総辞職を何回しても取り返しのつかないほどの大失態、大不祥事を繰り返しながら、記者会見で首相が被害者救済法成立の成果を得意げに話すのには、呆れてものが言えなかった。

 

被害者救済法成立の「陰の立役者」は日本維新の会だ。与党内では創価学会丸抱えの公明党が自らへの波及を恐れて事態が膠着していたが、日本維新は立憲民主と組んで公明を牽制し、法案成立に動いた。これが、時事通信(12月2日)のスクープ、国民民主を自公連立政権に加えるという「保守連立構想」につながり、さらには、日本維新を加えた〝保守大連立構想〟に発展しようとしているのだから面白い。

 

自民は、長年手足に使ってきた公明の衰えを最近痛感している。公明の集票力が創価学会員の高齢化によってとみに衰え、ゆくゆくは思うように票が集まらないことを知っているからだ。そのことが旧統一教会を手足の一つに加え、これまでなりふり構わず選挙活動をやってきたことの背景になっている。ところが、今後は旧統一教会とは「手を組まない」というのだから、その代わりの戦略が必要になる。それが〝保守大連立構想〟だ。

 

自民にとっては、国民民主なんて「毛ほどの存在」でしかない。彼らはこれまで連合の大企業労組の忠実なエージェントとして行動してきただけのことであり、連合とのパイプが(連合会長の篭絡によって)公然と通じたことから、早晩不要になる存在だ。国民民主は、すでに当初予算、補正予算などすべての重要案件に賛成している「完全与党」であり、いまさら「保守連立構想」などと騒ぎたてるほどのことではないのである。

 

自民が公明の衰えを組織的にカバーするには、日本維新を最終的には〝保守大連立構想〟に加えなければならない。私は大阪の公立高校の出身だから、大阪の風土や大阪維新の選挙戦術の巧みさをよく知っている。大阪維新の選挙戦術は、知事、大阪市長をはじめ府下自治体のトップを奪い、その権力を活用して支配網を大胆に広げていくというものだ。

 

これは、自民の長年「手足」として活動してきた公明には絶対マネができない芸当である。創価学会が政界への進出を決定したとき、最初は「政治権力」の奪取を目指していた。それが世論の激しい批判の中で(いまは生死のほどが分からないが)池田創価学会会長の「政教分離」の声明となり、それ以降、公明は自民の「手足」となって生き延びてきた。

 

公明が自民に変わって自治体の「頭」になるということは、自民との対決を意味し、自公連立政権の崩壊につながる。公明はあくまでも自民の「手足」に徹することによって「権力のおこぼれ」に与り、「甘い汁」を吸わせてもらってきたのであり、それ以上のことは「できない相談」なのである。

 

日本維新と立憲民主の国会共闘は、日本維新の側からすれば〝保守大連立構想〟実現への第一歩を意味する。日本維新は与党側に対しては公明への牽制力となってその影響力を弱め、野党側に対しては立憲民主を利用することで「野党共闘」を分断することに成功した。「一刀両断」ともいうべき巧みな戦術だ。

 

岸田政権は「危険水域」といわれる低い内閣支持率の中にありながら、安全保障関連3文書(国家安全保障戦略、防衛大綱、中期防衛力整備計画)の改定に向けて、「敵基地攻撃能力(反撃能力)」の保有を認め、2027年度の防衛予算をGDPの2%(約11兆円)とすること、そのため2023~27年度の防衛費を過去最高であった2019~23年度実績の27兆4700億円の1.5倍以上の総額約43兆円とすることを打ち出した。「安倍1強政権」のもとでも世論の動向を確かめなければ世に出せないような「大軍拡・大増税」政策を、岸田政権がなぜこの期に及んでぶち上げることができるのか。

 

私は、自民が日本維新を「トロイの木馬」として利用することで、野党共闘を分断して抵抗勢力を弱め、与党内では公明の勢力を割くことで〝保守大連立構想〟への筋書きを確立したと見ている。岸田政権にとっては野党共闘の分断下では、もはや低支持率など問題ではなく、世論を気にする必要もない。岸田首相自身にその覚悟があるかどうかは知らないが、この路線が自民の次期後継者に受け継がれていくことは間違いない。(つづく)