日本共産党の統治システム〝民主集中制〟が機能不全に陥りつつある、志位委員長はこの危機を打開できるか(その7)、岸田内閣と野党共闘(66)

日本共産党創立101周年記念講演会が2023年9月15日に開かれ、志位委員長が「歴史に深く学び、つよく大きな党を――『日本共産党の百年』を語る」と題して講演した(赤旗9月16日)。昨年9月17日、志位委員長は「日本共産党100年の歴史と綱領を語る」とのテーマで100周年記念講演を行ったばかりだ。それを今年も再び行うというのは、いったいどういう意図なのだろう。これからも「102周年記念講演」「103周年記念講演」と連続開催して、毎年同じことを言い続けるのだろうか。

 

その後の赤旗の「党活動面」をみると、「101年の歴史に誇りと確信、全支部が視聴し『大運動』飛躍を」(9月19日)、「記念講演の大学習運動にとりくみ、この9月、すべての支部が入党働きかけと読者拡大を」(9月21日)、「9月目標達成の合言葉、すべての支部が記念講演を視聴・読了し、すべての支部が入党の働きかけに踏み出そう、すべての支部が『赤旗』読者を増やそう」(9月22日)とあるように、党勢拡大運動の掛け声が大きく変化していることに気付く。

 

これまでの党勢拡大目標は、第28回党大会(2020年1月)で決定した「党創立100周年(2022年7月15日)までに第28回党大会時比130%の党をつくる(党員35万人、機関紙読者130万人)」という数値目標だった。ところが、党勢拡大運動が思うように進まず(逆に後退している)、2023年1月に予定されていた第29回党大会を2024年1月に1年間延期せざるを得なくなった。また『日本共産党の百年』の党史編纂も遅れ、発表されたのは党創立100周年から1年後の2023年7月だった。

 

赤旗はこの間、「130%の党づくり」を掲げて党組織や党員を叱咤激励してきたが、第29回党大会を4カ月後に迎えたいま、もはやそれが誰の目にも〝達成不可能〟であることが明らかになった。その代わり持ち出してきたのが「歴史に深く学び、つよく大きな党をつくる」という101周年記念講演の大学習運動なのだろう。赤旗には各地視聴会場の感想として、「記念講演、やる気でた」「不屈の成長・発展に確信」「苦闘と開拓の歴史に誇り」「次の時代を開くと決意」(9月19日)などなど、〝革命政党〟としての共産党に対する共感と賛辞が集められている。なかには、「党勢拡大必ず」との見出しの次のような言葉もある。

――逆流の中、日本共産党がそれらに抗してきた歴史に学び、党勢拡大を必ず成し遂げようとの思いを強くしました。本当に試練続きの歴史だったが、悲観することなくむしろ誇るべきことであると思います。日々党勢拡大に悩んでいますが、それが党の長年の歴史から見て当たり前で、苦労をはねのける気概を持って、日々頑張りたいと思いました(大分県)。

 

記念講演大学習運動のシナリオは、「130%の党づくり」を数値目標とする党勢拡大運動の未達成は、党中央の(過大な)拡大運動方針の誤りの所為ではなく、支配勢力の反共攻撃によるもの――との見方を広げることに重点が置かれている。共産党が〝革命政党〟であるがゆえに党勢拡大運動は支配勢力から総反撃を受ける、そう簡単には達成できない、だから今までにも増して頑張ろうという――というストーリーである。これなら、いくら拡大運動が失敗しても党中央の責任が問われることはないし、党員や党組織が頑張ればいつかは困難な事態は克服できるということになる。これが〝たたかいの弁証法〟だといいたいのだろう。

 

だが、私が注目したのは「――とりくみへの反省にたって、全党のみなさんに訴えます」という9月20日の「大運動」推進本部の声明だった。ここには、党勢拡大運動推進本部の必死の呼びかけにもかかわらず、その指示に従わない党機関や党組織が県機関も含めて多数に亘っていること、すなわち共産党の行動原理であり、かつ統治システムの根幹である〝民主集中制〟が形骸化し、次第に機能不全に陥りつつあることが図らずも露呈されているからである。

――党創立101周年記念講演会での志位和夫委員長の記念講演が、党員の誇りと確信を呼び起こし、また党外の方々にも党への理解と信頼を広げる力を発揮し始めています。同時に「大運動」のとりくみの現状は、〝勝負の月〟にふさわしい飛躍がつくれておらず、9月の残る10日余り、記念講演の大学習運動にとりくみ、党勢拡大と世代的継承の一大飛躍をいかにしてつくるかが問われています。

――3連休までの党勢拡大の結果は、党員拡大、赤旗読者拡大とも、個々の党員、党組織の奮闘はあったものの、全国的には掲げていた各県・地区の節目標には程遠い到達にとどまりました。3連休までに変化をつくったところは、目標をやりぬく構えを確立し、その達成への段取りと手立て、その実践が真剣にとりくまれています。(略)しかし、こうした党組織は一部にとどまり、3連休はほとんど党勢拡大の結節点にならなかった党組織も少なくありません。党勢拡大、とりわけ党員拡大は、前進のための具体的な手だてがとられなければ絶対に前進しません。にもかかわらず、少なくない県機関では、3連休作戦などで拡大の目標を決めるものの、それに責任を負わない、具体化の手だてもとっていないという状況がありました。こうした県機関が多数だったことは(以下、略)。

 

事態は「深刻」の一字に尽きる。これまで党中央からの指示や訴えは数知れず繰り返されてきたが、そのほとんどは個々の党員の気概を喚起し、奮闘を促すものだった。それが今回は、党組織それも県機関までが(表面上は従うものの)実質的にはサボタージュ状態にあることを指摘せざるを得なくなったのである。その責任は推進本部にあるとしているが、問題の根は深く、推進本部の指示のやり方を変える程度のことでは片付かないことは誰もが知っている。党創立100周年の記念講演が華々しく開かれた2022年以降の党勢拡大の推移をみても、党勢は後退一途で回復の兆しはいっこうに見えてこない。おそらく〝勝負の月〟の今年9月以降においても、党勢は依然として後退を続けるとしか考えられない。

 

党首公選制を党外で主張したとして京都の党員2人が除名されて大問題になったが、党中央の指令が県機関においても(実質的に)サボタージュされるような〝民主集中制〟の形骸化が進んでいることに比べると「チョロコイ」ものだとみんなが思うだろう。それが完膚なきまでに明らかになるのが第29回党大会(2024年1月)であることを考えれば、「2024年問題」は単なる人出不足問題だけではなく、共産党の統治システムの根幹が問われる年になることは間違いない。(つづく)