この首相にしてこの大臣、(福田辞任解散劇、その5)

 中山国土交通大臣が就任後わずか5日目で辞任した(更迭された)。さすがイギリスのタイムズ紙が「不快な失言癖のある派手な国粋主義者」と評した麻生首相の任命した大臣だけある。「この首相にしてこの大臣」というべきか、さしずめ中山氏は「確信犯的な暴言癖のある生粋の国粋主義者」というところだろう。

 しかし中山氏が自民党最大派閥の事務総長をつとめ、今回の総裁選挙では麻生氏当選の立役者として大量票をまとめたというのだから、麻生首相にとっては一大論功行賞に値する「適材適所」の人材だったことは間違いない。加えて、中山氏は麻生首相とは靖国人脈に連なる生粋の国粋主義者である点でも同根だし、日本が「単一民族」で構成されていると信じ込んでいる点でも同じイデオロギーの持主だ。まさに「同志」ともいうべき間柄なのである。

 しかし麻生首相がニューヨークタイムス紙上で「口紅つけても豚は豚」と揶揄されているように、いまのところは彼は「口紅」で厚化粧しているので国民の前に素顔があらわになっていない。「漫画オタク」だとか「秋葉原系キャラ」だとか広告会社に作らせたイメージ(虚像)の陰に隠れているだけの話なのだ。しかし混じり気のない「生粋」の中山氏は、そんな厚化粧は面倒だとばかりに「素顔」で国民の前に突然現われたので、みんなが驚いたというわけだ。さぞかし麻生首相は、中山氏に念入りに「メーッキャプ」しておけばよかったと今頃は後悔していることだろう。

 それにしても「中山暴言」は、発足早々の麻生内閣に対して大打撃を与えたことは間違いない。国粋主義者でありながら、その素顔を「口紅」や「仮面」で隠して居並んでいる閣僚の面々は、中山氏の一連の暴言体質に対する国民の批判が、次は自分たちの方にも降りかかってくることを懸念しているのである。麻生内閣の本性が、図らずも「中山暴言」によって暴露されることを恐れているのである。

 「残るも地獄、去るも地獄」という言葉があるが、いわば「雪隠詰め」の状態にはやくも麻生内閣は追い詰められたといえる。早期解散に打って出るのも、解散日程を延ばすのも、どちらも麻生内閣自民党の支持率低下に拍車をかけることは必至という状況だ。公明党などは日に日に創価学会会員の自民党への失望感が増しているので、とにもかくも早期解散の一点張りなのである。

 今日の国会で麻生首相所信表明演説が行われる。また各党の代表質問も引き続いて行われる。そしてそれが一巡した10月3日あたりに国会解散があると伝えられている。この段階で麻生首相がどのような決断に踏み切るかは、この間の国会論戦に対する各紙の論評次第だろう。すでに今朝の民放各社のテレビトークショーではいろんな政治観測が乱れ飛び、しかもコメントは辛口のものが多かった。国民の気持ちが麻生内閣から急速に離れていく様子がありありと感じられるのである。

 これに対して昨夜日曜日のNHKスペッシャル「決戦前夜」は本当に酷かった。内容の殆どは自民・民主両党に関する報道なのに、「不偏不党」「政治的中立」を掲げる放送法の手前からか、スポット的に「その他政党」の画面を流して誤魔化すという「見ていられない」ような最低の中身だった。「NHKスペッシャル」といえば、NHKの報道番組のなかでも花形番組なのに、これでは良識ある視聴者から見放されることは確実だ。(続く)