自らの大阪市政の不祥事には頬かむりし(棚に挙げて)、堺市政攻撃に熱中する橋下大阪市長に対して、竹山陣営はなぜ事実にもとづく反撃に出ないのか、「反大阪都構想」は「反橋下維新」でなければ効果がない、堺市長選の分析(その8)、改憲勢力に如何に立ち向かうか(38)

 このところ、橋下維新が主導する大阪市政においては目を覆うような不祥事が相次いでいる。それも単純な不祥事ではない。橋下市長が鳴り物入りで導入した「民間人公募区長」「民間人公募校長」の不祥事であり、橋下維新の主義主張の根幹にかかわる重大な不祥事なのである。本来ならば、大阪市長としての管理責任・政治責任を問われる重大事態であり、橋下市長は辞任も含めて自ら責任の所在を即刻明らかにしなければならないはずだ。

 ところが、橋下市長は不祥事の原因究明や管理責任の明確化をそっちのけして堺市長選に熱中し、あまつさえ不当な堺市政攻撃を繰り返している。名目は「維新の会共同代表」としての政党活動との触れ込みらしいが、実体は堺市長選を口実にして大阪市政の公務を放棄し、お隣の堺市政に乱暴な介入をしているのと等しい。こんな市政介入をそのまま放置していては、「堺の自治」は文字通り崩壊してしまうのではないか。

 竹山マニフェストは、「大阪都構想」に対する制度的批判に重点が置かれている。地方自治制度としての「大阪都構想」の問題点を明らかにし、その是非を争うことは選挙戦としては当然のことだ。だが同時に、この「大阪都構想」を打ち出しているのはいったい誰なのか、大阪都構想の下での大阪府大阪市の行政実態はどうなっているのか(問題はないのか)、「言っていること」と「やっていること」は同じなのかそれとも違うのかなど、橋下維新の“実体”も鋭く問わなければ選挙にならないだろう。

 言い換えれば、「反大阪都構想」(理念)は「反橋下維新」(実体)で具体的に裏打ちされてこそ堺市民に対して“アピール力”を持つのであり、選挙政策としての“リアリティー”を持つといえる。単なる制度批判では“空中戦”になってしまって地上の市民には届かないし、市民の関心を集めることも深めることもできない。確実な得票につながる“地上戦”を展開するためには、橋下維新の不祥事の実態と根源を「リアル」に明らかにしなければならないのである。以下、そのための材料として、今年9月以降の大阪市政の不祥事に関する各紙記事を紹介しよう。

(1)公募民間人区長関係の不祥事
 日経新聞9月1日:「公募区長がセクハラ? 大阪市が調査、職員が被害申告」
 大阪市で昨年8月に公募で就任した男性区長(54)からセクハラ被害を受けたとの申告が部下の女性職員からあった(8月31日に判明した)。区長は昨年秋ごろ、区職員との会食で酒に酔って体調を崩した女性を介抱する際、顔や腹部を触ったほか、別の機会に女性の私生活に関して不適切な発言をしたとされる。区長は日経新聞の取材に対して事実を認めたものの、「セクハラの意図は全くなく、発言は冗談だった」と釈明し、辞職する意向はないと表明した。

(2)公募民間人校長関係の不祥事
 ①産経新聞9月11日:「児童の母にメール、親睦会で尻触る、公募校長セクハラ 更迭、研修後、別学校配属へ、復帰ありき「制度欠陥」」
 ②読売新聞9月11日:「更迭校長 研修後復職へ、大阪市教委処分 新たなセクハラも、橋下市長が復職支持、信頼回復難しい(関大教授)」
 ③朝日新聞9月11日:「民間人校長を更迭、大阪市教委 セクハラで減給、離職 半年で2人」
 ④毎日新聞9月11日:「民間人校長を更迭、大阪市立小 児童母親にセクハラ」

 公募で今年4月に大阪市立小に着任したばかりの民間出身の男性校長(59)が、複数の保護者(母親)らにセクハラ行為をしたとして、市教委は9月10日、校長を減給10分の1(6カ月)の懲戒処分にし、11日づけで市教育センターに更迭する人事を公表した。しかし任期を3年間と定めた校長職として採用し、他の職務につけないという理由から(実際は橋下市長が復職を強く支持(指示)したことから)、市教委は研修を受けさせた後、別の学校に校長として復帰させる方針だという。

 会社役員出身の民間人校長は、今年4月に赴任後、児童の母親に対して「僕と会えなかったらさみしい?」「君の気持聞かせてよ!」などのメールを送り、親睦会で同席した際に尻を触った。別の保護者が校長の言動に注意したが、後日の会合でも再び同じ母親の腰に触れたという。その他、地域のバーベキュー大会などでも別の母親に対し性的な質問をしたとされる。だが校長は例によって、「保護者らと懇意になって情報を得ようと思った。セクハラの意図はなかった」などと弁明している。

 聞けば聞くほど唾棄すべき不祥事だが、これまで橋下維新を最も高く評価してきた産経・読売両紙の報道が最も詳しく、かつ最も辛辣な論評を加えていることからみても、両紙がこの事態を極めて深刻に受け止めていることが分かる。民間人校長の公募は昨年成立した橋下市長肝いりの市立学校活性化条例に基づき実施されたもので、今年度は民間から11人が着任したが、すでに今年6月には別の民間人校長が着任僅か3カ月で「僕の思う職場と違う」との理由で勝手に退職しており、これで11人のうち2人までが学校を離れた(放棄した)ことになる。

 職員に対しては「職員基本条例」、教員に対しては「教育基本条例」によって厳しく監視しながら、自分が政治的に任用した民間人公募区長や公募校長に対しては何ら責任ある態度を取らない。こんなダブルスタンダード(二枚舌)の橋下維新の実態を事実にもとづいて暴露してこそ、橋下維新のいう「大阪都構想」の実体が明らかになるというものだ。次回は、大阪では市営地下鉄や市バス事業の民営化など「公共交通の切り売り」を試みながら、堺市では「LRT構想」などを公約する橋下維新のまちづくり政策の矛盾について述べたい。(つづく)