大阪都構想の住民投票にたどり着けない場合、“2014年出直し大阪ダブル選挙”はあるか、大阪維新の会内部資料が暴露した橋下維新の実体(その7)、ポスト堺市長選の政治分析(16)

 2011年11月27日の「大阪ダブル選」から2年、各紙は挙って「検証・橋下改革特集」を組み、橋下維新の行方について論じた。そのなかで各紙が特に言及しているのが、大阪都構想を実現するための必須条件である住民投票の困難さだ。読売新聞は全紙を使った特集記事のなかで次のように言う(2013年11月27日)。

 「橋下氏、松井氏が宿願とする大阪都構想府議会、大阪市議会の議決を得て、来年10月頃に住民投票に持ち込みたい考えだが、いまだ十分なメリットや制度設計を示せないでいる。とりわけ、議会側が『粉飾ではないか』とやり玉に挙げるのが、都制移行で捻出される削減効果額。松井氏はダブル選直後に、府市の合計予算の約5%にあたる『4000億円』の削減効果を目標に掲げたが、府市が8月に示した試算では、都構想と直接関係ない市営地下鉄民営化の効果額などを含めても、1000億円に満たなかったからだ。特別区の区割り案や、府市それぞれが抱える巨額の借金の取り扱いも不透明なまま。橋下氏は『都構想の目的は経費削減ではなく、府市の二重行政を解消し、司令塔を一本化して大阪の成長戦略を描くことだ』と理解を求めるが、市議会で賛同を得られる見通しは立っていない」

 産経新聞も同じく全面特集を組み、くわえて1面で松井知事の単独インタビュー記事を掲載した。その見出しが「都構想へ再びダブル選も、松井知事『住民投票まで戦う』」というのだから穏やかではない。以下はその発言趣旨である(2013年11月26日)。

 「松井知事は、最重要施策の『大阪都構想』について(その是非を問う)住民投票まで戦い続けると述べ、住民投票にまで至らない場合は、共同代表の橋下徹大阪市長とともに知事・市長の出直しダブル選や、議員の解職要求(リコール)に臨む可能性を示唆した」

 松井知事の同種の発言には実は“前歴”がある。それは今年5月の「橋下市長慰安婦発言」に対して、自民、民主、共産の野党3会派が市政を大きく混乱させたとして、橋下市長に「猛省を促す」問責決議案を共同提出したときのことだ。公明は当初、問責決議に賛同する方向だったが、維新幹事長の松井知事が「問責決議は市長を辞めろということ。出直し市長選を行い、民意を問わなければならない」と脅かすと、今度は態度を一転させて(3会派を裏切って)反対に回った。

 公明が態度を豹変させた(松井発言に屈した)理由はただひとつ、橋下市長が出直し選挙を機に市議会を解散して市議会議員選挙に打って出た場合、第2会派の地位を失うことを恐れたからにほかならない。かくして大阪市議会は5月30日夜、本会議を開き、自民党など3会派が提案した橋下市長に対する問責決議案を大阪維新と公明の反対多数で否決したのである。

 今度の松井発言も同様の効果を狙ったものだろう。大阪市議会で公明が住民投票に賛成しなければ、知事・大阪市長の“出直しダブル選”に持ち込み、形勢を一気に変えるとの脅かし戦術に出たわけだ。だが、今度の松井発言は前回ほどの反響を呼ばなかった。それどころか「やれるものならやってみろ!」との冷たい反応が各会派から返ってきたという。

 松井氏も大阪維新を取り巻く情勢が半年前とは一変していることを自覚しているはずだ。それでいて「狼少年」のような発言を繰り返さざるを得ないのは、住民投票がそれだけ大きな壁に突き当たり、口先だけでも“出直しダブル選”のような「一か八か」の大勝負に出なければ事態を打開できないと思っているからだろう。

 しかし、さすがの橋下氏も松井氏と口裏を合わせることができなかった。橋下市長は、大阪都構想の実現が難航した場合に松井知事とともに知事・市長の出直しダブル選に臨む可能性について、市役所での記者団の質問に対して「先のことを言うような状況ではない」と明言を避けた(産経新聞、2013年11月27日)。出直しダブル選が成功しなかった場合、それが橋下維新の即消滅につながることを認識しているからだろう。(つづく)