安倍内閣・自民党の高支持率を分析する(4)、“中間政党・公明党”を改憲側に追いやらないためにも、保革対決の枠を超えた護憲勢力の結集が安倍政権の対抗軸になる、維新と野党再編の行方をめぐって(その7)

 連休明けに安倍首相の私的諮問機関、安全保障懇談会の報告が出される予定だという。安倍首相はそれを受けて集団的自衛権の「限定的」行使を容認する方針を打ち出すつもりのようだ。閣議決定に先駆けてなし崩し的に既成事実を積み上げ、連立与党の公明党を何とか巻き込んで国会審議に臨む作戦だと見える。

 5月3日の憲法記念日には、NHK、民放を通して多くの憲法座談会が開かれた。だが、そのなかで際立ったのは公明党の煮え切らない態度だった。集団的自衛権解釈改憲に対する各政党の態度を「YES」か「NO」の札で示すときに、公明党の代表が横長の「NO」の札をわざわざ縦方向に置いたのは見苦しい限りだった。つまり「NO」の札を見せて一見反対のように見せながら、そのくせ「YES」か「NO」かの態度をはっきりさせないという“中間政党”の体質が余りにも露骨に出ていたからだ。

 司会者の横にいた政治評論家がもっぱら公明党に対して質問を集中し、集団的自衛権への態度決定と自民党との連立政権維持の関係を質したが、それにも公明党は明確に答えなかった(答えられなかった)。要するに、自民党との連立政権は維持して与党の座は確保したい。しかし、解釈改憲集団的自衛権を認めたと烙印を押されることは避けたい。こんな“ヌエ的”ともいえるのらりくらりとした態度に終始したのである。

 公明党がどっちつかずの態度に終始するのは、解釈改憲に対するこの間の国民の厳しい世論の高まりがあるからだろう。公明党が“中間政党”の立場を利用して与党の座に居座り続けるためには、世論の動向をどう読むかがこれからの(これまでも)カギとなる。しかし、安倍政権のように世論を無視して突進する極右政権にはこの「風見鶏的方針」は通用しない。集団的自衛権に対する「白か黒か」の態度をはっきりさせなければ、連立与党の座を維持できない。だから、公明党はかくも苦労するのである。

 かの政治評論家は、「公明党はそれでも連立政権を解消しない(できない)」と明言していた。私もそう思う。連立政権にあって国土交通相ポストを一貫して確保してきた公明党は、いまや建設族議員グループのなかにあっては最右翼の位置を占めている。中央でも地方でも、公共工事の差配を左右するほどの政治権力を手にしているといってもいいぐらいだ。そこには、社会底辺層の支持者を相手にしてきたかっての宗教政党の面影はもはや見られない。地元保守層の中核をなす中小建設業を政治基盤とする利権政党への変身が一路進行中なのであり、だから公明党は選挙に強いのである。

 しかしこんな公明党の前に立ちはだかるのが、集団的自衛権の行使容認など安倍政権の解釈改憲に対する国民世論の動向だ。折りしも5月2、3日に発表されたNHKの憲法世論調査結果は、公明党を動揺させるには十分過ぎるほどの内容だった。そこには朝日新聞世論調査と同じく、1年前と比較して「構造的変化」といえるほどの国民の護憲意識の高まりが見て取れるからだ。以下、主な質問に限って回答の変化を見よう。

憲法を改正する必要があると思うか。
 「改正する必要がある」42%→28%、「必要はない」16%→26%

憲法9条を改正する必要があると思うか。
 「改正する必要がある」33%→23%、「必要はない」30%→38%

○政府が憲法解釈では認められないとしている集団的自衛権の行使を認めるべきだと思うか。
 「憲法を改正して行使を認めるべきだ」19%→13%、「これまでの政府の憲法解釈を変えて行使を認めるべきだ」29%→21%、計「行使を認めるべきだ」48%→34%
 「これまでの政府の憲法解釈と同じく行使を認めるべきでない」17%→27%、「集団的自衛権自体を認めるべきでない」9%→14%、計「認めるべきでない」26%→41%

 つまりここ1年の間に改憲志向の国民世論が護憲志向に逆転し、その時々の世論に沿って軸を移動させる公明党にとっては厳しい判断に迫られることになったというわけだ。もちろん安倍政権にとっては公明党を敵に追いやることは得策でない。だから公明党対策としてはいろんな「限定条件」をつけ、集団的自衛権の行使容認に踏み切るだろう。そしてまた公明党も“下駄の雪”よろしく「どこまでも付いて行きます」ということになるのだろう。

 この解釈改憲容認の方針は今後おそらく公明党の政治生命を脅かすほどの事態を招くであろうが、そんなことは安倍政権にとってはどうでもいいことだ。いったん解釈改憲の道筋をつけることができれば、中間政党の一つや二つが潰れても構わない。安倍政権の「歴史的使命」はそれで十分に達成されることになるからだ。

 だが、国民にとってはこのような解釈改憲を阻止することが“歴史的使命”であることには変わりない。戦後70年、一貫して憲法体制を守ってきた私たちがここで集団的自衛権の行使を容認することなど絶対にありえない。ならばどうするのか。それは公明党改憲側に追いやらないためにも、これまでの「保革対決」の枠組みを超えた護憲勢力の結集を図ることだ。次回はその構図を説明したい。(つづく)