集団的自衛権行使の「新3要件」の原案を用意したのは、実は自民党高村副総裁ではなく、公明党北側副代表だった、この驚くべき西日本新聞の大スクープ記事を創価学会会員や公明党関係者はどう見るのか、連立政権維持のため「謀略」をほしいままにする公明党執行部は即刻退陣させなければならない、維新と野党再編の行方をめぐって(その21)

 拙ブログに対していつも辛口のメールをくれる福岡の友人が、「お前の分析は大甘だ。これを見ろ。公明党は謀略政党そのものではないか!」といって、怒りの添え書きとともに6月20日付けの西日本新聞をファックスで送ってくれた。見れば、1面トップに「自衛権行使『新3要件』公明が原案 自民案装い、落としどころ」との大見出しが踊っているではないか。他紙がまったく触れていないところをみると、今回の集団的自衛権の与党協議の裏側を暴露した最大のスクープ記事であることに間違いない。

内容はこうだ。自民党の高村副総裁が6月13日の与党協議で私的に提案したとされる自衛権行使の「新3要件」は、実は公明党の北側副代表が裏で内閣法制局に原案を作らせ、高村氏に手渡したものだったというのである。北側氏をはじめとする公明党執行部が、解釈改憲で対立する首相と山口代表の「落としどころ」を探るため、山口氏が「憲法解釈の一番のベースになっている」と尊重してきた1972年政府見解を援用する形で、「限定容認」と読み取れる原案を内閣法制局に作成させ、これを自公与党が合意できる閣議決定文に仕立て上げようと動いたというのである。

産経新聞が伝えるように、集団的自衛権の行使を可能とする憲法解釈変更の閣議決定は、6月19日に行われた安倍晋三首相と公明党山口那津男代表の党首会談で最終局面に入ったとされる。そこでの解釈改憲の核心は、自衛権行使の「新3要件」のなかの「他国に対する武力攻撃が発生し、これにより国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆されるおそれがある」場合、という集団的自衛権行使に絡むくだりである。この文言の出元が北側副代表だとは全く知らない公明党国会議員団の間では(悲しいことだが)、異論が続出し、議論が紛糾していると伝えられている。だが、山口代表は安倍首相との1対1の会談後、1972年見解については「尊重しながら議論する」と記者団に述べているのだから、すでに安倍首相と山口代表との間では集団的自衛権の行使容認については実質的合意が出来上がっていると見てよいだろう。

 そう思って6月13日前後の各紙を丹念に読み返してみると、西日本新聞がスクープした公明党の謀略は、この時点ですでに他紙にも一定程度知られていたのではないかとの観測が成立する。たとえば、6月13日(夕刊)の日経新聞には次のようなくだりがある。

 「自民、公明両党は13日午前、安全保障法制整備に関する協議会を開き、集団的自衛権の一部容認の検討を始めた。座長の高村正彦自民党副総裁は『他国への武力行使が発生し、我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるおそれがある』などの3要件からなる自衛権行使の私案を提示した。公明党山口那津男代表は参院議員総会で『合意を目指す姿勢で臨みたい』と表明した」
 「安倍晋三首相は首相官邸で高村氏と石破自民党幹事長から協議会の報告を受けた。首相は高村氏の私案について『その線でやってもらいたい』と指示した。その上で『今国会中に閣議決定できるよう全力を尽くしてもらいたい』と早期の与党合意を求めた」
 「高村氏は協議会後の記者会見で『自公の合意ができたら、政府がつくる見解に入れてほしい』と強調し、同案を集団的自衛権の行使容認の閣議決定の原案にする考えを表明した。公明党北側一雄副代表は協議会で『憲法解釈の見直しは一切駄目だというわけではない』と述べた。同党幹部は『高村氏の案をもとに党内をまとめていかなければならない』と述べ、13日午後にも党内調整に入る考えを示した」

 この記事は、北川氏が「高村私案」の原案をつくったという裏側の事実を知らなければ書けないほど確信に満ちたものであり、「北側原案」→「高村私案」→「首相承認・指示」→「公明党内調整」→「与党合意」→「閣議決定」の政治スケジュールが予定通り進むことを前提にして書かれている。自公両党が合い呼応して集団的自衛権解釈改憲の道をひた走る模様が、きわめて正確に描かれているのである。

こうした実態を見れば、「平和の党」とか「護憲の党」といいながら、公明党の果たしている役割は、自民党の「隠れ別働隊=謀略部隊」そのものに他ならないことがわかる。「平和の党として自民党にブレーキをかける」とか「党内野党の役割を果たす」などと言って国民の目をごまかし、マスメディアに対しては「公明党解釈改憲を阻むかも」といった期待を持たせながら、こともあろうに公明党自身が解釈改憲の原案を用意して密室協議の裏で合意成立の機をうかがってきたのである。許せないことではないか。

 国民や公明党支持者はもとよりマスメディアさえも欺いてきた公明党の体質は、「謀略政党」そのものとして厳しく批判されなければならない。「高村私案」を「はじめて見た」と驚いて見せた北側副代表などは、さだめしナチスの国民啓蒙・宣伝大臣ゲッベルスに匹敵する「謀略の天才」として与党内では評価されているのだろう。いまマスメディアがなすべきことは、公明党の謀略策動に対する仮借ない批判であり、公明党執行部の即時退陣を求めることである。また創価学会会員や公明党関係者は与党協議をいったん中断させて、「高村私案」に関する事実解明に立ち上がってほしい。それがせめてもの「平和の党」を信じてきた公明支持者の義務であろうというものだ。(つづく)