憲法9条を蹂躙し、集団的自衛権(海外での武力行使)を容認しながら、公明党はなぜかくも明々白々なウソをつくのか、宗教政党における政策と教義(信心)の関係、維新と野党再編の行方をめぐって(その26)

 公明党のホームページを開くと「集団的自衛権について」の項目があり、そこにいま話題の【Q&A 安全保障のここが聞きたい<上下>】が掲載されている。
その前書きがふるっている。「安全保障に関する(2014年7月)1日の閣議決定は、憲法の枠内で許される『自衛の措置』の限界を示しました。公明党自衛権の行使に歯止めをかけるなど議論をリードしました。安全保障について公明党の考え方をQ&Aで紹介します」というのである。その幾つかを抜粋し、政府の想定問答集(毎日新聞、2014年6月27日)と比較しながら検討しよう。

【公明QA】
「Q2 与党の協議で何を議論し、何が閣議で決定されたのか?」
「A2 憲法の枠内でできる自衛の措置(武力行使)の限界を確定。(略)特に「自衛の措置」(武力行使)の議論の中で、閣議決定の柱となっている自衛権発動の「新3要件」を詰めました。「新3要件」は、(1)わが国に対する武力攻撃が発生した場合、又はわが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これによりわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合に、(2)これを排除し、わが国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないときに、(3)必要最小限度の実力を行使する―という内容です。これによって、憲法上許される自衛権の発動は自国防衛に限られることが明確にされ、外国防衛それ自体を目的とする集団的自衛権の行使はできないことも確認されました」

【政府問答集】
「Q どのような場合に集団的自衛権が行使できるのか」
「A 新3要件を満たす場合に限り、国際法上は集団的自衛権が根拠となる『武力の行使』も憲法上許される。要件に該当するかどうかは政府が客観的、合理的に判断する」

【公明QA】
「Q3 集団的自衛権の行使を認めたのか?」
「A3 外国防衛それ自体を目的とする集団的自衛権は認めていない。個別的自衛権の行使は、自国が武力攻撃を受けたことが条件ですが、今回、その前であっても限定的に実力の行使が認められました。この場合、国際法上、集団的自衛権が根拠となる場合があります。しかし、このような場合であっても、あくまでも国民の命と平和な暮らしを守るための「自衛の措置」でなければならず、外国防衛それ自体を目的とする集団的自衛権の行使は認めていません」

【政府問答集】
「Q 集団的自衛権の行使はあくまでも自衛の措置で、他国防衛のためではないのか」
「A 他国防衛を目的にしないが、他国防衛が我が国の防衛になることは想定される」

【公明QA】
「Q4 『解釈改憲』ではないのか?」
「A4 憲法の平和主義は守られており、改憲には当たらない。『解釈改憲』とは、解釈によって憲法の考え方の柱を変えてしまうことであり、解釈改憲ではありません。今回の決定では、国民の命と平和な暮らしを守るため、自国防衛の場合に例外的に武力行使を認めた憲法第9条の柱はそのまま堅持されています。決定は第9条の枠内で、自国を守るための『自衛の措置』の限界について解釈の見直しをしたにすぎず、解釈改憲ではありません。一方、『さらなる解釈変更により行使できる自衛の措置の範囲を広げることができるのではないか』との懸念の声がありますが、今回の閣議決定では、解釈変更の限界を示しており、自民党の高村副総裁も『これ以上しようと言うならば、憲法改正しかない』と明言しています」

【政府問答集】
「Q 政府が示した8事例で集団的自衛権は行使できるか」
「A (米艦防護など)8事例のような活動が可能になるが、実際には個別具体的な状況に即して判断する」

 【公明QA】は、同様の趣旨を繰り返し強調する煩雑なものであるが、要するに「キモ」の部分は、「これ(新3要件)によって、憲法上許される自衛権の発動は自国防衛に限られることが明確にされ、外国防衛それ自体を目的とする集団的自衛権の行使はできないことも確認されました」、「今回の決定では、国民の命と平和な暮らしを守るため、自国防衛の場合に例外的に武力行使を認めた憲法第9条の柱はそのまま堅持されています。決定は第9条の枠内で、自国を守るための『自衛の措置』の限界について解釈の見直しをしたにすぎず、解釈改憲ではありません」という一節であろう。だがこの言い分は二重三重の詭弁(ウソ)によって塗り固められている。

 第1は、これまで政府が自国に対する武力攻撃が発生した場合に限って認められると考えていた「武力の行使」が、公明党が提案した「新3要件」によってわが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生した場合にも可能になったにもかかわらず、「憲法上許される自衛権の発動は自国防衛に限られることが明確」になったと臆面なくすり替えていることである。しかし政府問答集は「新3要件を満たす場合に限り、国際法上は集団的自衛権が根拠となる『武力の行使』も憲法上許される」とこの言い分を明確に否定している。また「要件に該当するかどうかは政府が客観的、合理的に判断する」として、公明党の意向とはかかわりなく武力行使に踏み切ることも明言している。

第2は、集団的自衛権の概念を「外国防衛それ自体を目的とする集団的自衛権」などと歪曲し、「集団的自衛権の行使はできないことも確認されました」と、あたかも公明党集団的自衛権を認めたわけではないような粉飾を凝らしていることである。「外国防衛それ自体」を目的とする集団的自衛権などおよそ国際法上存在しないし、またそんな法的概念もない。仮に存在するとしても、それは自国の国民を犠牲にして宗主国の防衛に借り出される属国の悲惨な状態を意味するに過ぎない。この点でも政府問答集は、「他国防衛を目的にしないが、他国防衛が我が国の防衛になることは想定される」と他国防衛を積極的に肯定している。ありもしない理屈まで持ち出してまで自らの行動を正当化しようとするーーー、公明党のこの謀略的体質はいったいどこから来るのか、後で検討しよう。

第3は、「新3要件」が政府が戦後一度も行うことのなかった海外での武力行使を容認するものであるにもかかわらず、こともあろうに「今回の決定では、国民の命と平和な暮らしを守るため、自国防衛の場合に例外的に武力行使を認めた憲法第9条の柱はそのまま堅持されています」と、「決定は第9条の枠内で、自国を守るための『自衛の措置』の限界について解釈の見直しをしたにすぎず、解釈改憲ではありません」と強弁していることである。

しかし政府問答集においては、「政府が示した8事例で集団的自衛権は行使できるか」との設問に対して、「(米艦防護など)8事例のような活動が可能になるが、実際には個別具体的な状況に即して判断する」との見解が明確に示されており、政府の判断で米艦防護や機雷掃海などを行うことが可能になっている。公明党が最初議論の前提にしていた「集団的自衛権に関する事例」の検討が憲法9条に抵触することが明白になるにつれて、「事例の議論をしても切りがない」と方針転換(屈服)し、事例の検討を曖昧にしたままで「新3要件」を決定したツケを「憲法第9条の柱はそのまま堅持されています」と一文で済まそうなど、驚きを通り越して声も出ない。

憲法9条を踏みにじり、集団的自衛権の行使を容認しながら、公明党はなぜかくも明々白々なウソをつけるのか。私は、その根源に横たわる宗教政党公明党における政策と教義(信心)の関係を分析しなければ、その疑問は解けないと思う。次回はその点について考えてみたい。(つづく)