終戦(敗戦)記念日に集団的自衛権の閣議決定を釈明しなければならない公明党の苦しい事情、それでもなお「憲法9条に象徴される平和主義はこれからも守っていく」、「今後も日本が国際社会の中で平和国家としての役割を果たせるよう平和の党・公明党がリードしていく」と強弁、維新と野党再編の行方をめぐって(その37)

今年のお盆明けに我が家に若干異変が起きた。8月17日、いつものように新聞を取りに玄関に出たところ、見慣れない新聞が入っているではないか。8月16日付けの公明新聞だ。私は数紙を定期購読しているが、公明新聞は頼んだこともなければ入っていたこともない(時々、大学の図書館で読む程度)。公明新聞は独自のルートで配達されるから、私のブログを読んでいる誰か(創価学会公明党の関係者)がわざわざ入れてくれたのだ。

8月15日は69回目の終戦(敗戦)記念日だった。見ると、公明新聞には「平和主義を守り抜く」と訴える東京池袋駅前の公明党街頭演説会の様子が大写しで掲載され、山口代表以下、党国会議員がマイクを握っている。記事の内容(抜粋)は概ね以下のようなものだ。
「69回目の終戦記念日を迎えた15日、公明党は全国各地で街頭演説会を開催し、不戦・平和の誓いを新たにした。山口那津男代表は東京都豊島区の池袋駅東口で、『戦後、アジアの人々に多大な損害を与え、根底からの反省を基に出発した精神を思い起こそうではないか。憲法9条に象徴される平和主義はこれからも守っていかねばならない』と強調。今後も日本が国際社会の中で平和国家としての役割を果たせるよう、平和の党・公明党がリードしていくと訴えた」
「その上で、7月1日の安全保障法制の整備に関する閣議決定に言及。『万が一の事態に備えるための抑止力を高め、力による現状変更を防ぐためのやむを得ない手だてだ』と指摘、『積極的な外交活動、対話によっていろいろな課題を平和的に解決することも誓い合った』と強調した。さらに閣議決定では、専守防衛を堅持し、非核三原則も守り抜くという平和国家としての基本精神を盛り込んだことを訴えた」

また新潟市でも同様の街頭演説会が開かれ、自公与党協議の「裏の立役者」である漆原国対委員長が演説した。「漆原氏は、安保法制整備に関する閣議決定について説明。『今回認めた自衛の措置は日本防衛が目的であり、他国防衛を目的とするいわゆる集団的自衛権とは全く違う』と強調し、『海外に行って戦争できる国になってしまった』との批判は全く当たらないと訴えた。また、公明党の果たした役割について、『安保環境の変化に応じて万一に備えるとともに、憲法9条の精神を生かした』と力説した」

公明新聞だから党の主張を伝えるのは当然のことだが、しかし私はわざわざ終戦記念日公明党集団的自衛権閣議決定について街頭で釈明演説し、しかも「憲法9条に象徴される平和主義をこれからも守る」、「日本が平和国家としての役割を果たせるよう平和の党・公明党がリードしていく」と山口代表や漆原国対委員長が強弁した事実に注目する。マスメディアでは閣議決定後、創価学会公明党内の異論がピタリと収束したと伝えられているが、実態は必ずしもそんな程度のことではないらしいからだ。

公明党集団的自衛権の行使容認という「ルビコン川」を渡り、その変質があまねく国民に知れ渡っているにもかかわらず、彼らが性懲りもなく「川は渡っていない」と繰り返すのはなぜか。それはきっと彼ら自身が、国民はもとより学会や党内でさえ説得できていないと自覚しているからに他ならない。先の産経連載(8月9〜12日)でも、主題は「かすむ航路、公明党 集団的自衛権の余波」であったし、副題は「意見集約 苦しむ創価学会」だった。集団的自衛権容認の「余波」はいまだ収まらず、むしろ「高波」となって公明党の航路を苦しめているのである。

私も繰り返すが、集団的自衛権の行使容認は公明党がなんと言おうと国民は納得していない。このことはどんなマスメディアの世論調査でも明らかだ。産経新聞の連載最終日に当たる8月12日、奇しくも閣議決定後2回目の世論調査が連載記事の横に発表された。産経新聞はいつものように「限定的」と条件をつけて質問し、回答を肯定側に誘導しようとしているのだが、それでも回を追うごとに「評価しない」回答が増え続けている。以下、質問と回答を記そう。なお回答のカッコ内数字は前回7月19、20両日の調査結果である。

【質問】同盟国の米国など日本と密接な関係にある国が武力攻撃を受けたとき、日本への攻撃とみなして一緒に反撃する『集団的自衛権』について、政府は限定的な行使ができるよう憲法解釈を変更する閣議決定を行った。評価するか。
【回答】評価する33%(35%)、評価しない59%(56%)、他9%(9%)

【質問】憲法解釈の変更によって集団的自衛権を使えるようにしたことについて、政府は国民に十分な説明を行っていると思うか。
【回答】思う12%(10%)、思わない84%(86%)、他3%(5%)

 こんな数字を目の前にしては、さすがの公明党も釈明演説をしないわけにはいかなかったのだろうが、ウソをつけばつくほど窮地に陥っていくことは目に見えている。もはや公明党の表看板である「平和の党」は無いのも同然であり、いくら綻びを繕おうとしても隠し切れるものではない。私は遠からず公明党が表看板を投げ捨てて居直るものと思うが、なおそれまでには若干の紆余曲折があるかもしれない。

 しかし次なる問題は、来年10月に予定されている消費税8%から10%への引き上げに対して公明党がどのような態度を取るかだろう。産経連載記事の焦点は実はこの問題に当てられており、最終回の見出しは「軽減税率 自民との攻防に苦慮」となっている。公明党が消費税10%引き上げの条件としている生活必需品に対する軽減税率の適用をめぐって、自民党が実施困難(反対)の意思を表明しているからだ。

 集団的自衛権の問題は、公明党のアイデンティにかかわる「理念」問題であるが、消費税引き上げ問題は創価学会会員の胃袋にかかわる「現実」問題だ。「現世利益」を何よりも重視する学会員にとって、「庶民の党」である公明党が生活必需品の軽減税率抜きの消費税引き上げなどに応じることなど思いもよらないだろう。だが山口代表は、消費税10%引き上げ時に軽減税率の導入が望ましいとしながらも、「最終的には首相の判断。首相が判断できるよう材料を与党として整えるのが重要だ」とはやくもトーンダウンしているのだという(産経新聞、8月12日)。(つづく)