「安倍1強体制」の潮目が変わった、もはやアベノミクスの神通力が効かなくなり、これからは「落日矢の如し」の日々が始まるだろう、「地方創生」キャンペーンの意図と役割を分析する(その11)

前回のブログでは、期待を込めて「(安倍)内閣支持率が急落するか?」と書いた。その前後に実施された各紙の世論調査では「急落」とまではいかないまでも、しかし「落ち目」であることははっきりした。つまり潮目が「上げ潮」から「引き潮」へと明らかに変わったのである。この低落傾向がこのまま持続するとなると、安倍内閣は間もなく「危険水域」に近づくことになる。以下、幾つかの世論調査結果を参考にしながら、「潮目→落ち目」の背景を探ってみよう。まずは、調査実施時期の順に各社の内閣支持率の数字を並べてみる。

(1)共同通信、10月18、19両日実施、20日発表
内閣支持率は48%で前回9月調査に比べて7ポイント下落し、不支持率は一挙に11ポイント上がって40%になった。これはかなりの急変動だといってよい。なお、安倍政権の経済政策による景気回復を「実感していない」との回答が85%に上った。

(2)毎日新聞、10月18、19両日実施、20日発表
内閣支持率は47%で前回9月調査と変わらなかったが、不支持率は前回から4ポイント上がって36%になった。安倍政権が新たに看板政策に掲げる「地方創生」に対しては「期待する」58%、「期待しない」38%となり、期待感の方が大きかった(初物効果か)。

(3)読売新聞、10月24、25両日実施、26日発表
内閣支持率は53%で前回10月3〜5日調査から9ポイント大幅低下し(「急落」といってよい)、不支持率は前回から7ポイント上がって37%になった。安倍内閣の経済政策については、「評価する」が前回から10ポイント急落して41%となり、「評価しない」が5ポイント上がって44%となった。これは同項目の質問が始まって以来の初めての現象であり、遂に「評価しない」が「評価する」を上回って逆転したのである。読売はこの逆転現象を「評価する」「しない」が「拮抗した」などと歪曲しているが、これはアベノミクスの宣伝に邁進してきた読売新聞のショックの大きさを物語るものであろう。「評価しない44%」>「評価する41%」という調査結果を否定できない以上、素直にその数字を認める方がジャーナリズムらしい態度だと思う

(4)日本経済新聞、10月24〜26日実施、27日発表
内閣支持率は48%で前回9月調査に比べて5ポイント下がり、第2次安倍内閣では7月調査と並んで過去最低を記録した。不支持率は前回から5ポイント上がって36%になった。不支持の理由の第1は「政策が悪い」というもので、前回から6ポイント上がって45%に達した。

(5)朝日新聞、10月25、26日実施、27日発表
内閣支持率は49%で前回10月4、5日調査に比べて3ポイント上がり、不支持率は前回から3ポイント下がって30%になった。各紙とは異なる結果なのだが、朝日は「内閣支持率微増49%」との見出しを付けただけでその原因に関しては分析していない(避けている)。その代わりと言ってはなんだが、「安倍首相の経済政策で日本経済が成長することを期待できると思いますか。期待できないと思いますか」という質問の結果に大きな紙面を割いている。それによると、この質問は昨年4月以来7回にわたって続けてきたが、5回までは「期待できる」が「期待できない」を常に上回っていたにもかかわらず、今年9月の第6回で「できる」「できない」がともに39%同率となり、今回は「期待できる」が前回から2ポイント下がって37%、「期待できない」が6ポイント上がって45%になり、遂に逆転したというのである。

私は内閣支持率の変動にも興味があるが、今回の一連の世論調査では、安倍政権の経済政策すなわち「アベノミクス」に対する国民の判断がどういう数字となってあらわれるかに注目していた。言うまでもなくその理由は、安倍内閣支持率が高止まりしてきた最大の原因が、国民の「アベノミクス」に対する期待感にあると考えてきたからだ。そういう観点からすれば、今回の読売と朝日の調査結果が図らずも一致したことは興味深いし、またそこに強い必然性を感じるのである。

というのは、同趣旨の質問にもかかわらず安倍首相の経済政策に対する質問の回答は、読売が「評価する」「評価しない」、朝日は「期待できる」「期待できない」との違う表現になっている。これは、読売が「アベノミクス」という政策を打ち出した安倍政権の政治姿勢の評価に重点を置いているのに対して、朝日は経済政策としての「アベノミクス」に注目し、それがまだ「期待レベル」に止まっていることを前提に質問していることのあらわれだが、その両社の調査結果が一致したことが面白いのである。

このことを結論的に言えば、「アベノミクス」は読売調査によって国民から政治的に否定されたばかりか、朝日調査によって経済的にも期待されなくなったことを意味する。つまり安倍政権を支えてきた「アベノミクス」が政治的にも経済的にも国民から見放されつつあることが見て取れるのである。私は曲りなりも一級建築士なので建築的に表現すると、安倍政権という強固な建物の基礎・土台が空洞化していたことが明らかになり、上屋は依然として残っているものの建物自体は大きく揺らいでいる、とでもなろうか。これからも「潮目」の変わり目に注目したい。(つづく)