大阪の公明党は近代政党の体をなしていない、大阪都構想協定書に「賛成」しておいて住民投票で「反対」するとは自己矛盾そのものだ、創価学会が支配する公明党は二重の「憲法違反」を侵している、2014年総選挙を分析する(その15)

幾ら「ウソも方便」だとはいえ、これではあまりにも人(社会)を馬鹿にした話であり、日本国憲法を踏みにじる行為ではないか。12月30日の読売新聞によると、公明党大阪市議団は(これまで反対してきた)大阪都構想の是非を問う住民投票を来年5月に実施するため、大阪維新の会が提案する協定書(都構想の設計図、制度案)に修正を求めず、ほぼ「丸のみ」で賛成に回ることを確認したのだという。

この協定書は、維新だけの法定協で作ったもので、公明は「修正で済むレベルのものではない」との理由で10月27日、自民、民主、共産とともに府市両議会で反対して否決したばかりなのである。その協定書を今度は修正もせず「丸のみ」するというのだから、中身は全く同じなのに前回は「黒」と言ったものを今度は「白」と言うに等しい。同じ内容の協定書に対してたった2ヶ月の間に「反対」が「賛成」に変わるのだから、政策の一貫性を求められる政党としては自殺行為そのもので、その「変節」には恐怖感さえ覚える。

ところがその一方、公明党大阪市議団は「制度案(都構想)への反対姿勢は変わらない」、「5月の住民投票で橋下市長に退陣していただこうと思う」、「徹底的に反対キャンペーンを張って、他会派とも協力したい」と、やっていることとはまるで逆のことを言うのだから、話は何を信じていいか分からなくなる。言動がまるきり一致しないので不信感が募るばかりだ。

しかも「反対」から「賛成」にまわる理由が振るっている。「党本部の意向を踏まえ、最終的には住民が決定すべきだ」との見解がそれである。この短い文章には2つの重大な意味が込められている。第1は、大阪の公明党は「党本部」(創価学会本部)の言うことなら「どんな無理難題でも従う」という前近代的末端組織(隷属組織)だということだ。第2は、「住民投票が最終的な判断の基準」になるのであれば、議会での議論や議決はほとんど無意味になり、議会制民主主義の否定につながりかねないことである。

まず第1の点に関しては、周知の如く日本国憲法第20条1項には、「信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない」という政教分離の条項がある。今回、大阪の公明党がとった「党本部の意向を踏まえる」ということはすなわち「創価学会本部のお達しに従う」ことと同義だから、「党本部=創価学会本部」は明らかに憲法違反の「政治上の権力」を行使したことになる。

第2の点に関しては、日本国憲法第8章第92条において「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める」と地方自治の基本原則を規定している。一般的な憲法学説では、「地方自治の本旨」は「地方自治の本来のあり方」を意味し、地方自治は「団体自治」と「住民自治」の2つの要素から構成されるとされ、「団体自治」とは国から独立した地方自治体を認め、その自治体の権限と責任において地域の行政を処理するという原則のことであり、「住民自治」とは地方における行政を行う場合にその自治体の住民の意思と責任に基づいて行政を行う原則のことである。

ところが、国から独立した地方自治体である大阪府大阪市の「団体自治」に「国=首相官邸」が介入し、しかも創価学会という宗教団体を通して大阪都構想住民投票に賛成することを強要したのだから、これは間違いなく憲法のいう「地方自治の本旨」を踏みにじったファッショ的行為に他ならない。また「住民自治」にもとづく地方行政を実施するため、大阪都構想の是非を問う住民投票を実施するのではなく、大阪維新の会が法定協議会において一方的に決定した協定書(制度案)を住民投票にかけるというのだから、これはかってナチス専制政治を正当化するために利用した国民投票となんら性格が変わることはない。

12月30日の産経新聞(電子版)によると、大阪維新の会が掲げる大阪都構想の制度設計を担う法定協議会が30日、大阪市役所で開かれ、維新代表の橋下徹市長は10月に大阪府市両議会で否決された協定書(設計図、制度案)を改めて提出した。来年2月の府市両議会で協定書議案を再提案するため、それに先立つ来年1月13日の次回法定協で採決するよう橋下氏が提案し、維新と公明の賛成多数で了承した。次回1月13日の法定協議会でも公明は賛成する方針で、協定書は自民党など野党側が求める大幅修正を経ずに成案化される見通しだという。

 今後、橋下大阪市長と松井府知事は来年1月の法定協で可決される見通しの協定書を総務相に提出し、来年2月の府市両議会に再提案して維新・公明の過半数の議決を得て、住民投票を5月17日に実施したい考えだそうだ。だがこんな提案が通るようでは、大阪は「無法地帯」になってしまう。公明の方針転換を撤回させるため、大阪の名誉を懸けた戦いが新年から始まるだろう。(つづく)