衆院京都3区補欠選挙は記録的な低投票率になるだろう、有権者を馬鹿にした民主党京都府連の党利党略選挙は厳しい審判を受けなければならない、2016年参院選(衆参ダブル選)を迎えて(その15)

衆院京都3区では来月24日に補欠選挙が行われる。言わずと知れた自民党宮崎衆院議員が、週間文春にセックス・スキャンダルを暴かれ辞任したからだ。地元有権者の1人(私のこと)としてはそれだけでも恥ずかしいのに、今度の補欠選挙がそれにも増して「訳の分からない選挙」になったことが納得できない。当選確実と言われる民主党比例議員の現職、泉氏が鞍替え立候補するほかは見るべき候補者が現れず、地元では見たこともない(どこの誰かもわからない)候補者が4人も立つ乱立選挙になったからだ。

自民党が立候補を取り止めたのは、有権者から「どの面下げて」との厳しい批判を受けたためだ。女性なら批判をかわせるだろうとの魂胆で一時は女性府会議員の擁立に動いたらしいが、世論調査をやってみると「総スカン」とのことで断念したという(私のところへも彼女の実名を挙げた調査の電話がかかってきた)。いつもなら自民党の票田になる公明党支持者からも「裏切られた」との批判が集中して、「やるなら勝手にやって」と突き放されたのだからどうしよもなくなったのである。まさに自業自得というべきだろう。

自民党が候補者を立てられないという未曽有の事態を「好機」と見たのか、保守票狙いの候補者を「おおさか維新」と「日本のこころ」が立てた。いずれも30歳代の女性候補だが実体は「泡沫候補」に近いと言ってもいい。私の周辺の自民党支持者(中高年男性層)などは「あんなのにいれるか」と見向きもしていない。自民票のなかでも女性票が流れるという観測もあるが、これは選挙になってみないとわからない。彼女らの候補者選挙カーへの反応を見ないと何とも言えないからだ。でも、私の見立てでは今回は自民票のかなりの部分が棄権に回り、投票率が下がるというものだ。

保守票狙いは民主党比例現職議員の泉氏とて同じだ。もともと京都の民主党は、前原氏に代表されるように「自民より右」といわれる人物が結構いる。地方議員に出るとき自民党枠がなかったので、民主党など他政党から立候補した経歴の人物が結構いるのである(前原氏もその1人)。要するに議員になるためにはどこの政党から出てもいいのであって、その意味では現在の所属政党で彼・彼女らの政治信条がはっきりと色分けされるとは限らない。泉氏は福山氏の秘書としてスタートしたが、その政治信条はむしろ前原氏に近いと言われている。宇治にある自衛隊駐屯地の公式行事には毎年必ず参加するし、日米安保条約を信奉している点でも自民党と何ら変わらない。現に泉氏は「我々は日米安保条約を現実のものとして安保法の審議にも臨んできた。共産とは最終的に相いれない」と断言している(朝日新聞2016年3月15日)。

加えて、京都では府議会でも市議会でも自民と民主は長年の与党関係のもとで「一心同体」と言われるほど緊密な協力関係にある。直前の京都市長選でも両党は現職候補のために中軸となって戦ったし、そのなかで福山氏が連合京都の支援集会で「全力を挙げて共産党候補と戦う」と叫んだのはつい最近のことだ。そんなこともあって民主党京都府連は今月13日、定期大会で「いずれの選挙でも共産党と共闘しない」との活動方針を採択した(京都新聞2016年3月15日)。

「いずれの選挙でも共産党と共闘しない」との方針は、民主党京都府連の「党是=綱領」ともいうべきものだ。個々の選挙情勢に応じて「共闘する、しない」とのことであれば、これは戦術レベルの話でどこの政党にもあることだ。しかし「いずれの選挙でも共闘しない」となると、これは政党組織の基本にかかわる戦略レベルの方針決定であり、民主党京都府連にとっては「共産党と共闘しない」ことがこれからの党活動の原則になる。民主党京都府連は今後、地方選挙であれ国政選挙であれ「共産党と共闘しない」ことを宣言することで、(今までもそうだったが)自民党とは名前が異なるだけの「保守政党」への本格的転換を図ったのであろう。

となると、なぜ共産党が立候補しないことを決めたのか、その理由がよくわからない。1996年の小選挙区制の導入後、共産党京都府内の衆院選で候補を立てないのは初めてのことである。渡辺府委員会委員長は3月14日の記者会見で、「安倍政権を支える与党を少数に追い込むという5野党合意を、誠実かつ真剣に実行する立場から自主投票を決めた」と説明しているが(朝日新聞、同上)、京都では民主党をはじめ5野党合意など存在しない以上、こんな理由がそのまま通用するとは思えない。

これまでは全国レベルでは政党間に対立はあっても、地方レベルでは地域の要求に基づいて個々の政党が協力関係を結び、統一行動をとることはよくあった。しかし今度の場合は、全国で「安保法制反対」の野党合意があれば、地方では政党間でどんな齟齬(そご)や対立があっても国政選挙に協力するというのだから、これは今までとはまったく事情が異なる。まして今回の衆院京都3区の補欠選挙に関しては、中央レベルでも京都レベルでも民主党から共産党への協力要請は全くない。枝野幹事長は「(京都3区では)共産党と協力しない」と言明しているし、民主党京都府連の態度はすでに述べたとおりである。また補選に立候補する当の泉氏も「共産とは最終的に相いれない」と断言しているのだから、こんな条件の下で共産党が「自主投票」という形で民主党に事実上の支援をすることなど常識的に言って考えられない。

山下書記局長は、①安保法制反対で合意をした民主党が現職候補を公認している、②中央レベルでも京都レベルでも、民主党からわが党への協力の要請はない、③(京都3区選挙は)5党首合意で確認した現与党とその補完勢力を少数に追い込む必要のある選挙となることの3点を挙げ、「これらを踏まえ総合的に、自主的に判断した。補選という特別な条件のもとでの判断だ」(赤旗2016年3月15日)と述べているが、この3点の論理的整合性は何ら説明されておらず、ただ「総合的に」と言っているだけだ。

3月15日の朝日記事は、このほか「不満はあるが、全国的な共闘の流れの中で我慢しようということだ」(府委員会関係者)とか、「共産は合意を実行する党だと有権者に歓迎される」(渡辺委員長)とかの談話を拾っているが、果たしてこのような判断は有権者に支持されるだろうか。私は保守系支持者のみならず革新系支持者のなかにも「訳の分からない選挙」ということで大量に棄権者が生じ、むしろ補欠選挙自体が全国の野党共闘に否定的影響を与えることを恐れる。(つづく)