衆院京都3区補選の期日前投票が前回衆院選に比べて急減している、期日前投票の低下は何を物語るか、結局は投票率が全てを決めるだろう、2016年参院選(衆参ダブル選)を迎えて(その23)

先日、民進党現職候補の個人演説会に行ってきた。会場は小学校の体育館、用意されていた椅子席は100席余りだったが全部埋まっていた。かなりの盛り上がりだ。弁士は民進党衆参国会議員や連合京都会長などが熱弁をふるい、最後は参加者全員が立ち上がって「ガンバロウ!」と声を上げた。高齢化が進む伏見区にしては会社帰りのスーツ姿のサラリーマンの姿が目立ち、連合傘下の組合員が相当動員されたことを物語っている。

印象に残ったのは、連合京都会長が「おおさか維新」に対して激しい敵意を示したことだ。日頃から組合攻撃を売り物にし、今回の補選でも「身を切る改革」と称してもっぱら公務員攻撃をしている「おおさか維新」には我慢がならないらしい。政策の中身を批判しないで「大阪の人間がなんで京都へ来るんや!」と云ったのはどうかと思うが(地域セクト主義、排外主義の匂いがするから)、それでもこの種の発言は相当効き目があるらしく、最近は「おおさか維新」が「おおさか」を外して「維新」としか言わなくなったと得意げに話していた。

しかしもっと強く印象に残ったのは、北海道5区で陣頭指揮を執っているはずの馬渕衆院議員がわざわざ京都まで駆けつけて来て、「投票率を上げなくてはいけない」としきりに強調したことだ。北海道で死闘を繰り広げている与野党対決選挙の責任者が、世論調査でも「当選間違いなし」と太鼓判を押されている京都の候補の応援になぜ駆けつけるのか。そこには、野党共闘に背を向けた京都の民進党に対する批判が「低投票率」という形であらわれることを極度に恐れているからだろう。

自民、共産が有力候補を擁立しない「烏合の衆」の選挙で、民進前職候補が勝つのは当たり前の話だ。だから選挙の焦点は、どれぐらいの投票率となり、どれだけの差で勝つかということに絞られる。投票率がせめても前回衆院選並みの50%に近い水準になり、現職候補が大差をつけて勝ったのであれば、それはそれなりに評価されたとみることもできよう。だが投票率が(大幅に)低下すれば、如何に選挙に勝ったとしても当選議員の正統性は著しく傷つけられる。

馬渕氏の次に立った福山選対本部長(参院議員)は、週明けに急変した期日前投票の動向(低下)に強い警鐘を鳴らした。京都府選挙管理委員会の速報(ホームページで検索できる)によれば、告示日翌日の4月13日から始まった期日前投票は、当初は予想以上の好調な滑り出しだった。前回衆院選(2014年12月)に比較して1日目、2日目は150%台(前回の1.5倍の水準)を記録し、民進党選対はもとより選挙関係者も胸を撫で下ろしていた。ところが3日目あたりから事態が急変し始め、週明けの月曜日には遂に100%を切ったのである。それ以降、86%(17日)→78%(18日)→73%(19日)と低下が止まらない。このまま投票日まで低下を続けるのか、それとも下げ止まるのか、あるいは逆転して上昇に転じるのかが注目されるところだ。

京都府選挙管理委員会の話によれば、期日前投票が好調だとかえって有権者に安心感を与え、肝心の投票日には選挙に行かない人が増えるといった現象も最近ではまま見られるという。だから、期日前投票が不調だからと云って投票率が下がるとは必ずしも云えない――との論法も成り立つだろう。逆に云えば、期日前投票の低下が選挙陣営や有権者の危機感を掻き立て、結果として投票率が上昇することもあるかもしれない。

このような投票率が低下するとの情勢に危機感を覚えたのか、伏見大手筋商店街では最近「投票に行こう」とチラシを配る市民グループもあらわれている。選挙管理委員会の一般的な啓発活動とは違って、こちらの方の市民活動は案外効果があるかもしれないが、買い物客の関心はいま一つというところで反応がほとんど見られない。とにかく有権者の気持ちがどうしようもないほど冷めているのである。

この点では「おおさか維新」の方でも同じ状況だという。「おおさか維新」は京都3区が大阪への通勤者の割合が多く、京都中心部とは違って「おおさか維新」への反感も少ないと見て候補擁立に踏み切った。ここで「おおさか維新」の旗を挙げれば、大阪通勤者の共感が得られ、次の参院選でも全国政党としての存在感を示せると考えたのだろう。実際、大阪府知事大阪市長が京都沿線の駅前で直接街頭演説に立つ光景を見ると、ここは京都ではなくて大阪かと錯覚するほどだ。

だが、4月20日付の京都新聞は「乙訓 冷めた目線」との見出しで次のような選挙情勢を伝えている。
衆院京都3区補欠選挙(24日投開票)で乙訓2市1町の首長や職員は候補者の訴えに注視している。この1年半で首長がすべて交代し、遅れが目立つインフラ整備など新事業を打ち出す中、国とのパイプとして地元の国会議員の役割を重視しているためだ。しかし、候補者が演説などで乙訓に言及する場面は少なく、しかも与党候補は不在。冷めた目で選挙戦を見つめる職員もいる」
「肝心の候補者の口から地元の課題を聞く機会は少ない。ベテランの民進党前職を除く候補者は、これまでの政治活動では乙訓とほとんどゆかりがなく、『当初は乙訓という字が読めない候補者もいた』(ある選対幹部)という。(略)与党不在の選挙に、『国に相手されなければ、飛躍的なまちの発展にはつながらない』。ある職員は、選挙カーから響く訴えを聞きながら冷ややかに話した」

4月20日現在の期日前投票の結果はまだ掲載されていない。選挙戦終盤のあと3日、私はこれまでになく期日前投票の動向に注視している。(つづく)