蓮舫民進党新代表は野田前首相を民進党幹事長に据える人事案件を示した、9月16日早朝のNHKニュースは本当なのか、民進党代表選について(5)、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その12)

今日9月16日の早朝、NHKラジオのニュースを聞いて驚愕した。民進党代表選で新代表に選出さればかりの蓮舫氏が、次の焦点である幹事長人事について野田前首相の起用を提案するというのである。早速、朝日、毎日、日経各紙の朝刊を調べてみたが、そんなことはどこにも書かれていない。もし事実だとしたら、NHKの大スクープだということになる。

その後、NHKはテレビニュースでも同様の報道を繰り返しているので余程自信があるのだろう。そうだとすれば、これは「容易ならぬ事態」になったというほかはない。前回の拙ブログで、蓮舫氏は冷酷無比な「野田政権のエピゴーネン」だと書いたが、事態はその通りになったのである。

今日の夕刊で各紙がどのような記事で後追いをするかは興味のあるところだが、蓮舫氏の優勢を伝える各紙の記事は、これまでその理由を主として彼女の知名度の高さとそれを利用する「選挙の顔」に重点を置いて説明してきた。だから、今日の朝刊でも毎日新聞は、「民進『選挙の顔』優先」との大見出しで次のような解説記事を掲載した。
――次期衆院選に向けて党勢回復の糸口がつかめない中、蓮舫氏が選ばれたのは党のイメージを一新させる切り札として「選挙の顔」を優先させたためだ。しかし「顔」が代わっても、「中身」である政策面や野党共闘などの党運営で、岡田克也前代表の路線から独自色を打ち出すのは容易でない。

また、朝日新聞も同様に「蓮舫氏 完勝でも多難」との見出しで、解説欄に次のように書いている。
――民進党蓮舫氏を選んだのは、まさに「選挙の顔」として少しでもプラスになるという判断だ。国民は民主党政権の失敗を忘れていない。民進党が単独ですぐに政権に復帰できると考えている人は少ない。今回の結果は、「次期首相」としてではなく、あくまで政権に対抗できる「野党党首」を選んだものだ。

一方、日経新聞は「野田氏と岡田氏が連携」というやや異なった角度から蓮舫氏の勝利の背景を以下のように指摘した。
――民進党代表選は本命視されていた蓮舫氏が前原誠司元外相、玉木雄一郎国会対策副委員長に圧勝した。いち早く出馬の環境を整え、リベラル系から保守系まで幅広い支持を取り付けた。用意周到に臨めたのは、蓮舫氏の所属グループを率いる野田佳彦前首相と、岡田克也前代表が連携し、後継のレールを敷いたのが大きい。
――岡田克也前代表は憲法改正、環太平洋経済連携協定(TTP)、沖縄の米軍基地移設などの重要政策で「安倍政権が進めるやり方に反対」との立場をとった。参院選前に賛否が割れるテーマの意見集約をいったん棚上げする苦肉の策だった。民進党にはどんな解決策があるのか。自民党とどう違うのか。ここが曖昧では国民に選択肢を示せたとは言い難い。

この3紙の指摘は、いずれも蓮舫氏圧勝の背景(の一面)を分析しているうえで大いに参考になるが、私はどちらかと言えば日経新聞の解説により重大な意味を見出す。それは、蓮舫氏の勝因が「野田氏と岡田氏の連携」にあるとの指摘だ。岡田氏は蓮舫氏が自分の路線を支持すると見なして推薦したのであろうが、このとき蓮舫体制の下での人事までが合意されていたかどうかは別として、事態はその方向に進展していかない可能性が極めて高いと思うからだ。

それは、岡田氏が「安倍政権のやり方に反対」とした政策が悉く野田民主党政権のもとで決定された政策であり、岡田氏も「やり方には反対」でも「政策そのものに反対」していないからだ。消費税10%増税、TTP交渉の推進、沖縄の米軍基地移設の容認、原発再稼働など現在の安倍政権が推進する政策は、野田民主党政権のもとで決定されたものであり、野田グループに属する蓮舫氏がそれに反対できるわけがないからである。まして野田氏が幹事長に就任するとなれば、党運営の実権を野田氏が一手に握ることになり、蓮舫氏は「卓上の花」になる公算が大きい。

果たして蓮舫人事案がそのまま認められて野田幹事長体制が出現するのか、それとも人事案件を巡って民進党内が大混乱し、野田幹事長案が退けられるのか、いまだにNHKの大スクープを信じられない私はその判断に苦しんでいる。(つづく)