蓮舫・野田体制への激しいバッシングが原因で若干の軌道修正か(?)、蓮舫民進党代表は9月23日の野党党首会談で、衆院選においても「できる限りの協力」を確認した、民進党代表選について(7)、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その14)

 蓮舫・野田体制がスタートした9月21日の両議院総会の翌日、22日付各紙の民進党新執行部に対するバッシングは凄まじかった。二重国籍問題で蓮舫氏を一貫して批判してきた産経新聞は別格だとしても、その他の各紙においてもご祝儀記事とは程遠い批判的論調が目立った。それだけ野田幹事長の起用に象徴される「お身内人事」に対する批判が強く、このままでは「選挙の顔」としての蓮舫氏が通用しなくなる――といった観測記事まで飛び出す始末だ。

民進党規約によれば、両議員総会は党大会に次ぐ議決機関であり、衆参両院の国会議員全員によって構成される。総会は構成員の過半数の出席で成立し、過半数の賛成で議決される。蓮舫氏が新代表に選出された翌日の9月16日両議員総会は、出席者76名(衆院55、参院21)で辛うじて定足数147名の過半数を確保したが、新執行部が発足した9月21日の両議員総会出席者数は総会開始時段階で64名(衆院39、参院25)と過半数を割り、委任状(72名分)がなければ両院議員総会自体が成立しなかった。また欠席者で委任状を出さなかった11名の中に、代表選で蓮舫氏を真っ先に推薦した旧社会党グループ代表の赤松氏が含まれていた(東洋経済オンライン、9月22日)。

 前回の拙ブログで、民進党代表選に党員・サポーターの6割近くが棄権したと書いた。蓮舫氏の絶対得票率(蓮舫氏の党員・サポーター得票数÷全党員・サポーター数×100)は25%、4分の1だった。そんな支持基盤の薄い蓮舫氏が、新執行部を決める両議員総会で国会議員の過半数の出席を得られず、委任状に頼って議決せざるを得なかったことは、党内基盤がきわめて不安定であることを示すものだ。以下、9月22日付の各紙の論評を紹介しよう。
――21日に正式発足した民進党の新執行部は、蓮舫代表が目指す挙党体制とはほど遠い布陣となった。役員には野田佳彦幹事長に近い顔ぶれが並び、早くも「お友達執行部」と揶揄(やゆ)される始末。役員人事を決めた21日の両院議員総会の出席者は約70名で、党所属国会議員147名の半数にも満たず、役員人事などに関する委任状すら出さなかったベテラン議員も。蓮舫氏は船出早々、お家芸の「党内分裂」の危機に直面している(産経新聞)。
――蓮舫氏は今回の人事で、代表選を争った勢力だけでなく、約20人の赤松氏グループの離反すら招きかねない状況となった。21日の議員総会に出席した議員は約70名程度で、前原氏、赤松氏の姿はなかった。代表選での圧勝にもかかわらず、蓮舫氏の周辺では早くも「このままだと、『非主流派』の議員数の方が多くなってしまう」と懸念する声が出ている(読売新聞)。
――21日に発足した民進党新執行部人事では、有力議員の役職辞退が相次ぎ、挙党体制からは程遠い船出となった。野田佳彦幹事長の起用への反発がくすぶっているためだ。新役員に野田政権での要職経験者が多いことも党内の不信感を広げており、党運営は不安材料だらけだ(毎日新聞)。
――党内では今回の人事で野田氏を幹事長に起用したことに「挙党体制にほど遠い」との批判が相次いでいる。代表選で蓮舫陣営を支えたリベラル系議員らを中心に、新体制への不満がくすぶりそうだ(日経新聞)。

 各紙挙っての酷評(バッシング)は、さすがの「鉄面皮」と言われる野田氏も相当こたえたらしい。もしこれで緒戦の10月23日投開票の東京10区、福岡6区の衆院補欠選挙で惨敗するようなことがあれば(野党共闘をしなければ大敗することは確実)、蓮舫・野田体制には早速黄信号が点滅することになる。ここはひとまず持論を封印して野党共闘に舵を切り、負けても言い訳が立つようにして、新執行部の危機を回避するとの作戦がとられたのだろう。それが9月23日の野党党首会談となったのである。

 9月24日の「赤旗」1面トップには、「総選挙も『できる限りの協力』確認」「10月の衆院補選含め具体化の協議開始で合意」との大見出しが躍っている。その確認とは次のようなものだ。
 ――志位委員長は、野党共闘参院選1人区でも大きな成果をあげたとして、「次の総選挙での選挙協力を進めるために真剣な協議を開始しましょう」と提起しました。また、10月に行われる衆院東京10区、福岡6区の補選についても、野党共闘を実現すべく、協議を速やかに開始することを提起しました。これに対し、蓮舫氏は「これまでの公党間の党首の合意は大変重い。岡田前代表の路線を踏襲していきます」と発言。今後、4野党の書記局長・幹事長の間で、総選挙と衆院補選での選挙協力の具体化のための協議を開始することで合意しました。

 「赤旗」にはこれ以上詳しいことが書かれていないので、民進党側の事情や反応はよくわからない。この点毎日新聞は、見出しに「4野党 衆院選も『協力』、党首会談 具体策では温度差」とあるように、民進党内の複雑な事情や野党党首会談の中での蓮舫氏の発言を正確に伝えていて、今後の野党共闘が一筋縄ではいかないことがよくわかる(協力の字をカッコにしているのがその表れだ)。蓮舫氏は毎日新聞のインタビューに次のように答えている(9月24日)。
――(問)共産党との協力は補選と次期衆院選では分けて考えるのか。
――(答)臨時的に行われる補選は総選挙とはちょっと次元が違う。新たに(野党を)選んでもらえるかという戦いであり、与党対野党のシンプルな構図が望ましい。いろいろな選択肢を排除しない。

 この蓮舫氏の発言は微妙だ。見方によっては「補選では野党共闘」「総選挙は別」という意味にも受け取れ、「いろいろな選択肢を排除しない」という表現がこのことを示唆している。民進党京都府連は、岡田前代表の下での「できる限り協力」という確認にもかかわらず、「協力はしない」との態度を貫いた。京都選出の衆院議員・山内氏が国対委員長に就任したが、彼もまた「いろいろな選択肢を排除しない」として融通無碍な行動をとるのであろうか。(つづく)