番外編、前市職労委員長の顧問辞任でヤミ専従問題の幕引きさせてはならない、神戸市職労幹部は全員責任を取るべきだ、身辺雑話(7)、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その130)

この間、海外主張などの仕事が立て込んでいて、ほとんど拙ブログを更新できない状態が続いてきた。内心忸怩たる思いだ。海外出張の目的についてはいずれ報告したいが、神戸市職労のヤミ専従問題については近く第三者委員会の報告が出されるとのことだから、取りあえず私なりに一応の区切りをつけておきたい。私の主張は、これまで30年余にわたって続いてきた神戸市の労使癒着関係の「ウミ」をこの際徹底的に洗い出し、労使双方が然るべき責任をとるべきというものだ。

この点に関して、10月24日の神戸新聞は興味深い事実を伝えている。前市職労委員長が組合役員を離れて共助組合調査役に就いた2017年5月、市役所本庁舎3階に個室が供与されるという前例のない特別待遇を受けたが、その後、この個室には行財政局を含む局長級・部長級の幹部職員がしばしば訪れ、職員の勤務条件などに関する協議を繰り返していたというのである。何のことはない。当該個室は共助組合業務の部屋ではなく、実質的には「市職労顧問室」(組合事務所)として使用され、いわゆる「ボス交渉」の場と化していたのである。

この事態は、前委員長が依然として市職労の最高責任者であり、市当局も彼と協議しなければ話がまとまらない―と認識していたことを示している。いわば、前委員長は表向き共助組合調査役の役職に就きながら、実質的には市職労の「ヤミ専従役員」としての役割を続けていたということだ。市行財政局は神戸新聞の取材に対し、「政策を円滑に進めるために助言を求めた。共助組合調査役の業務と関係なかった」と協議が不適切だったことを認めている。

こうした実態が市議会の中でも明るみに出るにおよんで、さすがの前委員長も居直り続けることが難しくなったのか、10月23日付で今月末を以て組合に顧問辞任を申し出たことがわかった。また共助組合調査役のポストに関しても、今月末での退職願を「一身上の都合」という理由で提出したという。注目すべきは、彼の組合顧問辞任の言い草だろう。前委員長は神戸新聞の取材に対して、「(給与から組合費が天引きできなくする)給与条件の改正案が(市議会に)出ることが決意した大きな理由。組合を巡る混乱の責任を取る」と語ったという。

問題は、前委員長が組合顧問の辞任や共助組合調査役の辞職の理由に関して、「ヤミ専従問題」に象徴される長年の労使癒着関係や組合幹部の腐敗問題に一言も触れていないことだ。この言い草は、不正問題が発覚した企業幹部が自らの責任を回避しながら、「皆様に心配とご迷惑をかけた」と頭を下げる構図に酷似している。また、謝罪の言葉もなく「組合の混乱の責任」という訳のわからない理由を挙げての言い草は、事態の本質を隠蔽しようとする点ではより悪質だと言えるだろう。

自民、維新両会派は10月25日、市職労のヤミ専従問題に対する対応として、給与から組合費を天引きできないようにする条例改正案を市議会に提出した。前委員長の顧問辞任は、組合への批判の矛先を少しでも逸らそうという苦肉の策と言えるが、ヤミ専従問題の原因究明をうやむやにして逃げ切ろうなどと思うのは考えが甘すぎる。遠からず事態はもっと深刻化し、組合幹部役員全員の辞任が避けられなくなる日が来るだろう。

要するに、市職労が「解体的出直し」を決意しなければ事態は基本的に解決しないということだ。現在の執行部が全員辞任して手の汚れていない新執行部にバトンを渡さない限り、また、新執行部がフレッシュなメンバーで一から出直さない限り市民の不信と疑惑を拭うことができず、市職労の刷新も中途半端な形で終わるだろう。そして、たとえ組合費の天引き問題が先送りされたとしても、今度はこのような事態に嫌気がさした組合員の離脱が始まり、組合の内部崩壊が進むだろう。なぜなら、これまでの組合組織率9割という驚異的な数字は、職員の市職労に対する信頼度を表すものではなく、市当局のエージェントに対する保険としての性格が強いからである。

最後に、ヤミ専従問題に象徴される神戸市の労使癒着関係は、市当局にも多大な責任があると言わなければならない。久元市長はあたかも非当事者のような態度でヤミ専従問題に取り組んでいるが、自分自身も含めて市当局の積年の弊害の責任を免れるわけにはいかない。まして、市職労との間でズブズブの関係に浸ってきた行財政局や人事部局の責任はひと際大きいものがある。両者はいわば「共犯関係」にあるのであって、市当局の目こぼしや協力がなければこのような問題は発生しない。今後、第三者委員会が市職労のみならず市当局の責任をどのような形で明らかにするか、市民の眼は鋭く注がれている。(つづく)