関西空港の経営悪化問題、(神戸空港を取り巻く情勢をどうみるか、その2、神戸市長選座談会、その9)

A:それでは「関西3空港問題」の中でも最大の問題になっている関西空港の経営悪化問題に入ろう。なぜこれほどの事態になったのか。

B:いうまでもなく伊丹空港が「国営空港」であるのに対して、関西空港は「民営空港」である点だ。民営空港でも滑走路や空港施設を国が建設して民間に経営を委ねるという「公設民営方式」もあるが、関西空港の場合は基本的に民間会社が自力で空港を建設して運営する「民設民営方式」である点が経営の致命傷になっている。

C:こういうことになったのが、大阪財界の「神戸はけしからん」という言葉の最大の背景だ。もし神戸沖空港がすんなりと建設されていたなら、新空港は国営空港として運営されていた。また現在のような巨額の借金問題に悩むこともなかったというわけだ。ところが新空港建設が神戸でつまずいて泉州沖空港へ舵を切っている間に、国の財政事情や大蔵省の方針が変わって、「民設民営方式でなければ空港建設を認めない」ということになった。そこでやむなく関西空港株式会社という民間会社を立ち上げて、工事費を含めてその投資資金の大半を借金で賄わざるを得ないことになったわけだ。

A:それが関西空港の運命の分かれ道だったということか。しかしまともに考えれば、これだけ巨額の借金をすれば簡単に償却できるとはとうてい考えられない。なのに、なぜ関西財界や関係府県は関西空港の建設に踏み切ったのか。

B:これだけの巨大プロジェクトになると、そんな理性的な判断はどこかに吹っ飛んでしまうよ。目先の土木事業をめぐる激しい利権争いが前面に踊り出て、二階議員と西松建設のような「ゼネコン・族議員連合軍」が互いの分け前をめぐって修羅場を繰り広げていたからね。それに巨額の漁業権補償金が飛び交い、地元では地方議員と地域ボスが血眼になって利権あさりに群がっていた。これが建設費のどんどん膨らんでいった原因だ。

C:くわえて関西空港の将来に関しては、当分は民営空港で出発するものの、「いったん造ってしまえば、後は国がなんとか面倒を見てくれるだろう。」という根拠のない楽観論も当時は強かったね。この頃までは、まだ「東京と関西の二眼レフ論」が通用すると関西関係者は考えていた。羽田と成田が国の基幹空港であるなら、西日本を代表する関西空港もそうあって然るべしとの考え方が浸透していたからね。

B:しかし大阪財界も虫がよすぎる。自らは本社を続々と東京へ移転しておきながら、他方では「二眼レフ論」を唱える。こんな言行不一致は通用しないし、大蔵省も相手にしないよ。関西経済の地盤沈下と東京一極集中が一段と加速化するなかで、もはや「一眼レフ」になった日本列島には2つのハブ空港は要らないという方向へ、国の考え方が大きく変化していった。

(沖縄普天間基地移設問題)
A:でも最近になって、大阪府橋下知事がしきりに「関西ハブ空港論」をとなえているよ。伊丹空港を廃止して関空に一本化する案だ。おまけに沖縄の普天間基地移設問題も絡めて、関空の第2滑走路をアメリカ軍に利用させるという案まで浮上している。それにくわえて、神戸空港まで軍事利用に巻き添えしかねない勢いだ。いったい彼は正気なのかね。

B:なんでも喰らいつく「だぼハゼ」だと言いたいところだが、彼の本性はそんな生易しいものではないよ。「国の意図を代弁して、地方から発信する」というのが、彼の最も得意とする本質的な役割だ。知事会まで巻き込んで、普天間基地の「県外移設」を「国外移設」ではなく「国内移設」に持ち込もうとする。「国家権力の狗(いぬ)」だと言われても仕方がないよ。

C:そういえば道州制導入の先兵になっているのも橋下知事だ。関西州の州都としてWTCを想定して、遮二無二府庁を強行移転させようとしている。また関西空港ハブ空港に格上げするためには、普天間基地移設問題まで利用しようとする。地方自治体の首長としての見識も節度も何もない。「何でもあり」の世界だ。

B:でも専門家の間では、関空の軍事利用構想なんて噴飯ものだよ。第一、国際的なハブ空港で民間利用と軍事利用が一緒になっている例なんて聞いたことがない。そんなことをしたら航空事故の危険性が桁違いに高まって、世界の航空会社は近寄らなくなる。乗客だって危なくて利用しないよ。逃げてしまう。

A:そうなると、関西空港は軍事利用に一本化されるおそれがあるね。普天間基地の移設問題が関空で解決されて「めでたしめでたし」というわけか。悪い冗談にもならないよ。

B:でも驚いたことには、テレビのニュースショーで関西在住のコメンテイターが、橋下構想を天まで持ち上げていたから油断できないね。「こんなことを言ったら抗議が殺到するかと思っていたら、よくぞ言ったという声が多かった。」なんて放言していたよ。「ここまで言うか」と思ったね。

C:岡田外相も知事会で普天間基地移設問題を議論してもらうのはありがたいと橋下知事を早速ベタほめだ。「第二、第三の沖縄」を全国に広げていこうとでも考えているのか。まったく話にならないね。(続く)