「鉄とコンクリート」の自民党、民主党、そして神戸市政の行方、(神戸市長選座談会、最終回)

自民党について)
A:今年も大晦日を迎えた。2009年は国も地方も激動の1年だった。1年間を振り返ってみて、各々の感想を聞きたい。

B:なんといっても、自公政権が没落して民主党への政権交代が起こったことが大きい。自民党がつくった小選挙区制で自分が政権から放り出されたのは、歴史の皮肉という他はない。自ら「墓穴を掘る」の類だ。

C:そこが小選挙区制の恐ろしさだ。「小泉チルドレン」が「小沢チルドレン」に代わっただけだという冷めた見方もあるが、国民の意識変化は想像以上だ。もう二度と自民党が復活することはないだろう。

B:たしかに精彩のないことおびただしいね。このところテレビに出てくるのは石破氏ぐらいだが、彼の話を聞いていると「自民党もここまで堕ちたか」としか思えないほどひどい。なにしろ普天間基地問題のコメントなんかは、まるでアメリカの代理人そのものだ。それを日本の過疎地帯を選挙地盤とする代議士がいうのだから、民主党を攻撃すればするほど国民の心は自民党から離れていくよ。

C:そこが自民党の致命傷だ。民主党への批判が実は国民への攻撃になっていることに気がついていない。自分たちの政策がこれまでいかに民心から離れていたかということを自覚していないからだ。これでは「保守政党」の旗印が泣くね。

B:「保守主義」とはもともと国民生活の「安定」を重視する政治思想だ。「古き良きものを守る」ためには、「守るに値するもの」がなければならない。国民にとっては、それが「生活の安定」だ。生活の安定を保証できない「保守政党」など世界のどこを探しても存在しないよ。

A:だから彼らのいう「保守主義」とは、本来の保守主義とは「似て非なるもの」だ。アメリカや財界の利益を最優先する「保守主義」など聞いたことがない。綱領を改訂して、党名を「新自由主義党」とか、「脱保守主義党」とかに変更しなければならない。

B:それがいままでは政権党だったので、「包括政党」とか「国民政党」とかいって何とかごまかしてきたわけだ。でも野党になったいまでも、選挙地盤の利益を代弁しないでアメリカの代理人的なことをばっかり言っているのだから、これではますます国民からは愛想を尽かされるよ。

C:小泉構造改革の誤りを総括できないような自民党には明日がないね。それを象徴しているのが、自転車事故以外に話題の乏しい谷垣氏だ。舛添氏は「自民党に必要なのは、小沢氏以上の独裁者だ」と言って谷垣氏を批判しているらしいが、両氏とも前政権の幹部だったわけだから、小泉構造改革を総括しようにもできるはずがない。その苦しまぎれの脱出口が「独裁政治」(ファッシズム)というのでは恐ろしいね。

民主党政権について)
A:ところで民主党政権の方の評価はどうか。「コンクリートから人へ」というのが政策スローガンらしいが、本当かね。

B:口当たりのいいことや耳触りのいいことをいうのが鳩山首相の常だから、最初の頃は国民もそう思っていたのではないか。でも「看板倒れ」の様子が出てきたのは、鳴り物入りの「事業仕分け」でも軍事費にはほとんど手が付かなかったあたりからだろう。

C:普天間基地にしても辺野古移設にしても、軍事基地はすべて「鉄とコンクリートと火薬のかたまり」そのものだ。選挙公約だった普天間基地の県外移設を果たそうとしないのでは、「コンクリートから人へ」といったマニフェストはまったくのウソになる。

B:岡田外相にしても北澤防衛相にしても、沖縄の「人」を犠牲にしてでも、「鉄とコンクリートと火薬のかたまり」の軍事基地を辺野古に作ろうというのだから、言っていることとやっていることは全く逆だ。まさに「天と地」ほどの差がある。このままでは、「看板に偽りあり」ということになりかねない。

A:「鉄とコンクリートのかたまり」といえば、小沢幹事長も人後に落ちないね。最近ではダム建設をめぐる「天の声」問題やゼネコンからの政治献金問題をめぐっての「火消し」に追われている。ダム建設などの土木工事は、これも「鉄とコンクリートのかたまり」そのものだ。

C:民主党代表が小沢氏から鳩山氏に代わったのも、政治献金問題の陰にある小沢氏の「コンクリート体質」に国民が強い警戒の念を抱いていからだ。それがわずか政権100日で表舞台にふたたび出てきたのだから、先行きは必ずしも安泰というわけにはいかないだろう。

(神戸市政について)
A:神戸市政の現状に入ろう。矢田市長はいいお正月を迎えられるだろうか。

B:眠れない夜が続いているのではないか。住民訴訟での外郭団体への人件費補助金最高裁で違法となり、04〜05年度分の2億5千万円を返還させるよう命じた大阪高裁判決が確定したからね。

C:くわえて大阪高裁判決を受け、神戸市は今年2月、多額の賠償金を矢田市長らに背負わせるのを避けるため、矢田市長と外郭団体への返還請求権を放棄する条例改正案を市議会に提案してオール与党で可決したが、05〜06年度に支出した別の補助金の違法性が問われた同様の住民訴訟では、大阪高裁が今年の10月に返還請求権を放棄する議決について「議決権の乱用で無効」として、約55億円を矢田市長と外郭団体に請求するよう市に命じる判決を言い渡した。

B:神戸市はこの大阪高裁判決を不服として最高裁に上告したが、これは「泣き面に蜂」の大痛手だったね。最高裁の決定についても「コメントできない」(財務課)というほどのうろたえようだった。

C:神戸空港問題の行き詰まりと言い、小沢幹事長に頼った市長選の苦戦と言い、このところの神戸市政は「四面楚歌」だといっていい。そしてこの苦境からの出口はますます狭くなってきている。「鉄とコンクリート」で固めた市政が、これからいよいよ本番の試練を迎えるというわけだ。

A:こんな神戸市政の行政体質をみていると、自民党のいまと重なるところが多いよ。これまでの開発行政に対する反省も総括もないので、出口の見つけようがないわけだ。しかし自民党は滅んでも神戸市は滅ぼすわけにはいかないので、そこが自治体のしぶといところだろう。

B:でもそんなことで胡坐をかいていると、自民党と一緒で取り返しのつかない事態になる。市長選の批判を生かすのはこの機を除いていないとおもうのだが。(終わり)