「憲法改正」に関するNHK世論調査結果(2013年4月8日)は衝撃的だった(その1)、改憲勢力に如何に立ち向かうか(1)

 2013年4月8日に公表された「憲法改正」に関するNHKの世論調査結果は衝撃的だった。これまでの世論調査なら、憲法9条改定の是非を中心にして質問が組まれていたのだが、今回の調査では憲法9条に関する質問はなく、その代わり憲法96条改定に関する項目が中心になっている。また夏の参院選を目前に控えているせいか、自公連立政権が過半数をとることへの賛否、改憲勢力が2/3を占めることへの賛否などそれなりに興味深い(生臭い)質問が並んでいる。主な質問項目と回答結果は以下のようなものだ。

(1)安倍内閣支持率( )は2013年1月
支持66%(64%)、不支持19%(22%)
(2)政党支持率、同上
   自民43.6%(37.8%)、民主6.1%(7.6%)、維新2.1%(6.5%)、
   公明3.7%(4.0%)、みんな1.3%(3.7%)、共産2.0%(2.7%)、
   社民0.7%(0.8%)、生活0.4%(0.5%)、支持なし34.5%(30.8%)
(3)自民党公明党参議院でも過半数を確保するのが望ましいと思うか
「望ましい」23%、「どちらかといえば望ましい」37%、
「どちらかといえば望ましくない」21%、「望ましくない」12%
(4)今の憲法を改正する必要があると思うか
「改正する必要があると思う」39%、「改正する必要はないと思う」21%、
「どちらともいえない」33%
(5)憲法改正の要件について、憲法96条はまず衆議院参議院それぞれですべての議員の3分の2以上の賛成が必要だと定めているが、安倍総理大臣が憲法改正の要件を緩和することを目指すとしていることについてどう思うか
「賛成」28%、「反対」24%、「どちらともいえない」40%
(6)ことし夏に行われる参議院選挙の結果、憲法改正を目指す勢力が改正に必要な3分の2以上を占めることが望ましいと思うか
「望ましい」20%、「どちらかといえば望ましい」37%、
「どちらかといえば望ましくない」20%、「望ましくない」12%

 私は憲法学者でないのでこれまでの改憲世論の推移をつぶさに知っているわけではないが、これほど改憲側に傾いた世論調査結果は見たことがない。なにしろ「憲法改正が必要」であり、かつ「96条改正に賛成」だとする回答が両方とも反対意見を上回っており、しかも次期参院選において自公連立政権が過半数をとることへの肯定的回答が60%、同じく改憲勢力が「3分の2」を占めることへの肯定的回答が57%にも及んでいるのである。国民世論が激変した背景にはいったい何があったのか。

 この結果をどう見るかはそれぞれの自由だが、「9条の会」など護憲運動組織の末端に加わってきた私からすれば、今回の結果は驚愕すべきものでありかつ衝撃的な内容だったといわなければならない。それは、これまで憲法9条を中心に護憲運動が営々と積み上げてきた国民世論が一挙に崩れかねないような危険な兆候が示されているからだ。一言でいえば、国民の憲法意識が急速に右傾化し始めており、これまで憲法9条の改悪を阻んできた国民世論に“地殻変動”が起きているのではないかと思うほどの世論状況なのである。

 なぜ、これほどにまで国民の憲法意識が改憲側に傾いたのであろうか。私はその背景に3つほどの大きな変動要因が横たわっていると見ている。第1は安倍自民党政権の高支持率が継続していること、第2は改憲勢力の主導部隊(自民・維新・みんな)が総選挙で3/4の議席を占めたこと、第3は憲法9条改定を前面に出さずに96条改定を改憲の突破口に設定したことの3点である。

 第1の変動要因。札付きの「改憲タカ派」である安倍内閣の支持率が66%、自民党支持率が44%にまで上がっていることは、ついこの間まで「自民党はコリゴリ」といっていた世論状況から言えば考えられない数字である。しかし、直近の朝日新聞世論調査(4月16日)を見ると、阿部首相の政策のなかで一番評価する政策は「経済政策」が50%を占め、「憲法改正」は僅か6%に過ぎない。つまり阿部内閣や自民党の高支持率の主たる原因は経済政策にあるのであって、改憲政策が必ずしも支持されているわけではないのである。

 だからと言って、安心はできない。疑いもなく阿部内閣は正真正銘の「改憲タカ派」である以上、「アベノミクス」を梃子にした高支持率を背景に改憲意向を示していることは間違いない。また、北朝鮮や中国からの軍事的威圧(脅威)を利用して国民心理を改憲方向に誘導しようとする意図も明白だ。日々のテレビニュースで朝から晩まで報じられているように、北朝鮮の軍事行進や弾道ミサイルそれに金正恩第1書記の映像からは、単なるパフォーマンスとは思えないような(何とも言えない)不気味さが漂ってくる。また日本の領海ギリギリに連日航行している中国の監視船や巡視船の映像からも、日本を威圧しようとする中国の大国主義の空気がひしひしと伝わってくる。日本国民の対中感情はいまや最悪レベルに達しており、過去のいかなる時代よりも日中関係は険悪な状態にあると言っても過言ではない(つづく)。

●お断り
長らく「つれづれ日記」を休んでいましたが、今日から参院選をめぐる改憲動向に焦点を当ててブログを再開します。東日本大震災シリーズを書いている間、衆院総選挙や護憲問題に関するブログは別の同人ブログ『リベラル21』に掲載していました。月刊誌『ねっとわーく京都』のコラムも同様です。関心があれば読んでください。

なお東日本大震災関係のブログは、この改憲シリーズのなかで随時「閑話休題」として掲載するつもりです。