公明党は“自民の傘”から抜けられず、憲法96条改定に賛成するだろう、「憲法改正」に関するNHK世論調査結果(2013年4月8日)は衝撃的だった(その4)、改憲勢力に如何に立ち向かうか(4)

 憲法96条の改定をめぐって注目されるのが公明党の態度だ。世論動向を人一倍気にする政党(いわゆる「風見鶏政党」)として知られる公明は、これまでも山口代表が「自民党との連立政権の枠組みには憲法改正が入っていない」、「憲法96条改正については十分な議論の前提ができていない」、「今、96条改正の是非を判断するには熟度が足りない」とか言って、終始態度をあいまいにしてきた。

 しかし、自民党参院選公約に「96条改憲」を掲げて突っ走り始め、参院選後においては維新やみんなとの“改憲パーシャル連合”を組む可能性が出てくると、今度は与党の地位を失うおそれからか、俄かに96条改憲に向かって「前のめり」の姿勢を見せ始めた。そしてその背後には、「96条改正に賛成」、「参院選改憲勢力が3分の2以上を占めることが望ましい」が多数意見となったNHK世論調査があることは間違いない。

 公明は「二枚看板」を得意業とする政党だ。建前はいかにもそれらしきことを言いながら、本音は与党の位置をあくまでも確保して「実利」を挙げ、創価学会などの支持者に利益配分して選挙地盤を固めることを常套手段にしてきた政党である。だから表向きは「硬性憲法を維持する」(朝日新聞4月25日)という公式見解を表明しながらも、本音は山口代表が4月27日のテレビ東京番組で語った「憲法改正を理由にした連立を崩す必要がない」(産経ニュース4月27日)との発言になるのである。

 国の最高法規である憲法を改正することと自民との連立政権を天秤にかけること自体、政党としての存在意義を問われかねないあるまじき行為であるが、先のテレビ東京での山口発言が「衆院の任期で自公連立政権として決めたことをひたすら実行し、期待に応えるのが使命だ。連立を崩す必要はない」(読売ニュース4月27日)というのだから、もう何をか言いわんやだろう。

 通常の法案ならいざ知らず、憲法改正にかかわる政策までを棚上げにして「自公連立政権をひたすらに実行する」というのであれば、自民がいかなる政策を掲げようと「どこまでも付いてゆきます、下駄の雪」ということにならざるを得ない。とにかく与党の座にすがりつくことが公明の目的であって、政策は二の次三の次、つまり連立(野合)のための方便にすぎないということだ。

 ところがこんな「二足のわらじ」を履く公明党に対して、マスメディアの論調は驚くほど穏やかで優しい。先の朝日記事などは「公明、96条賛否先送り」「参院選、あいまい戦略」などと、如何にもまだ公明が96条改憲の態度を決定していないような書きぶりで、公明党への批判を注意深く避けている。おまけに「「平和の党」を掲げる公明党の支持母体である創価学会には9条改正に対する抵抗感が強い。将来的な9条改正につながることへの警戒感から、96条改正に積極的な首相との板挟みは続きそうだ」といった解説記事まで付けていて、公明が「平和の党」であるかのような提灯持ちまでする有様だ。

 一方、読売記事(4月27日)は、テレビ東京での山口発言を引いて「中身によって硬(かた)く守るべきものと、軟らかくしていいものとあるかもしれない」とも言及。96条の先行改正には反対の立場をとりながらも、改正に意欲的な安倍晋三首相や自民党に一定の配慮をにじませた。自公両党での意見対立が高じるのを避けるねらいがあるとみられる」と解説した。公明党の基本姿勢は96条改憲に反対だと(勝手に)見なして、反対姿勢を明確にしないのは「自民党への配慮」といった程度の解釈である。

 とはいうものの、その後で「山口氏は、96条の改正反対を参院選公約に明記するか問われると、「それ自体も少しかたくなな気がする」と否定する一方、「憲法の中身も手続きのあり方も、十分に国民の議論が成熟することが重要で、まだ議論が足りない」と語った」という重要発言を記事にしているのだから、公明党の本音が「96条の改正反対を参院選公約に明記しない」ことにあることをもっと明確に報道すべきであった。

 次期参院選改憲勢力が全体で3分の2以上を占めるのはもはや確実だから、その場合のケースは2通り、予想される政局シナリオは3通りに分かれるだろう。

 第1のケースは、自民党が単独で3分の2以上を占める場合のことである。この場合のシナリオは、安倍政権は何が何でも96条改憲に踏み切ることになるだろう。そうすると、公明は可決を見越して表向き棄権するかあるいは場合によっては反対に回るかもしれない。ただし、水面下では自公連立政権の継続を取り付けての話である。

 第2のケースは、自民党だけでは3分の2に届かず、維新とみんな、あるいは公明を合わせて3分の2以上を占める場合である。そうなると自民は、維新・みんなと公明のどちらかを選ばなければならなくなる。この場合、第2シナリオとして自民が維新・みんなと手を組むことになれば話は簡単だが、それでは公明が連立政権から離脱して自民の安定政権が揺らぐ恐れがある。維新・みんなの浮動票は何時消えるかもしれず、公明の手堅い組織票が自民にとっては安定政権の不可欠の条件だからだ。

 そこで第3シナリオが登場する。自民は維新・みんなとは手を組まず、公明と連立政権を継続する。この場合、公明と連立を組む条件として96条改憲を迫るか、それとも表向き公明に譲歩して96条改憲に何らかの付帯条件を設けるかのどちらかになるだろう。いずれの場合も国会に上程すれば、維新・みんなは賛成以外の選択肢はないのだから、96条改憲は可決されることになる。

 このように、公明は3つのシナリオのうち2つのシナリオで重要な役割を果たすことになり、いずれの場合も“自民の傘”から抜けられない。だからこそマスメディアもその動向に注目するのであろうが、この場合あいまいなのは公明党自体ではなく、マスメディアの報道姿勢そのものにあることをもっと自覚してほしい。(つづく)