大阪出直し市長選失速とみんなの党・渡辺代表8億円借金問題が連動して、「脱維新」政界再編が加速するだろう、大阪出直し市長選をめぐって(その15)

 これまでは専ら大阪出直し市長選をフォローしてきたが、今回は少し目を転じて、出直し市長選が政界再編に与える影響について書いてみたい。その切っ掛けは、みんなの党・渡辺代表の「8億円借金問題」がタイミングよく発覚したことだ。日ごろから胡散臭い行動で知られる渡辺氏が、パトロンの会社会長から8億円もの巨額資金を借りていたことが会長自らの手記で週刊誌に暴露され、猪瀬前都知事と同じく「借金の性格」や「金の行方」について説明に窮しているのである。

 みんなの党は、自民党から離党した渡辺氏を中心に2009年8月に結党された「第3極」を目指す新党だ(だった)。このため、その後に結成された日本維新の会に対しては当初から積極的に接近し、一時は2013年参院選選挙協力を結ぶ関係にまで至っていた。しかし橋下氏の慰安婦発言問題を機に渡辺氏が袂を分かち、江田氏など維新との連携を目指すグループが「結いの党」を結成して分裂した。その背後には渡辺氏が党の資金管理を一手に握り、政党助成金も含めて政治資金を事実上私物化していることへの不満があったと言われている。その結果、みんなの党は所属議員が激減して政治的影響力を失った。

そのハンディをカバーするため、渡辺氏が取った戦略が「責任野党」路線である。渡辺氏は安倍政権に急接近して特定秘密保護法案成立に協力し、集団的自衛権行使についても全面協力を約束するなど、「第3極」から「自民翼賛勢力=責任野党」へ立ち位置を移した。また橋下維新と結いの党の連携を牽制するため石原氏にも接近し、来たるべき「維新大阪系・結いの党」vs 「維新太陽系・みんなの党」との分裂にも備えた。つまり、渡辺氏は「第3極」として独自に政界再編に参入する道をあきらめ、石原氏などとともに自民党との連立(あるいは復帰)を目指す方向に舵を切った矢先に「8億円借金問題」に捕まったのである。

 私が、大阪出直し市長選における橋下維新の失速とみんなの党・渡辺代表8億円借金問題が連動して「脱維新」の政界再編が加速すると考えるのは、以下の理由による。第1は、出直し市長選の結果、大阪での橋下維新の凋落が決定的となったことだ。このため、来年4月の統一地方選で維新の壊滅を避けるためには、大阪維新の会を身も姿を変えて「変身」しなければならなくなった。橋下氏自身が「維新」という名前にはこだわらないと再三再四言明しているように、もはや「維新」という名前を捨てて新しい政党イメージを打ち出さなければ、大阪維新の会という地域政党を維持できないと考えているのではないか。そして、その切っ掛けを結いの党との連携と合流に見出したいと考えるのはごく自然なことだ。

 第2は、結いの党側の事情から言えば、江田氏らは弱小勢力であるがゆえに、橋下維新と連携しなくては「第3極」としての存在感を示せないということがある。結いの党は細野氏ら民主党とも組んで自民党政権を揺さぶることのできる「第3極」形成を目指しているが、当面は維新大阪系との連携を強めることによって民主党改憲派の受け皿を用意するつもりだろう。そして、その格好の追い風になったのが今回の渡辺氏「8億円借金問題」の発覚だ。これで江田氏らがみんなの党から分裂したことが正当化されることになり、維新大阪系との合流への動きが一段と高まることになる。いずれにしても維新も結いの党も「仮の名前」だから、“脱維新”はもうそこまで来ているというべきだろう。

 それでは維新太陽系とみんなの党はどうなるのか。勇み足を承知で言えば、石原氏らは維新大阪系と結いの党の合流を契機に東西が分裂し、そのうち生物的理由(高齢化)で消えていくだろう。また、みんなの党は渡辺代表の「猪瀬化」によって大打撃を受け、こちらの方は政治的に消えていくほかはない。いずれにしても「第3極諸派」は藻屑のごとく遠からず淘汰され、いよいよ政界再編の大嵐が訪れるのだ。(つづく)