来年4月の統一地方選・大阪府議選での自公選挙協力は、大阪維新の会を壊滅させるほどのインパクトを与えるだろう、維新と野党再編の行方をめぐって(その1)

4月13日の各紙は、来年4月の統一地方選大阪府議選において、自民・公明両党が選挙協力する方針で一致したことを伝えた。扱いはそれほど大きいものではなく、注意しなければ見落とす程度の記事に過ぎないが、その影響はすこぶる大きいと言わなければならない。場合によっては、大阪維新の会が壊滅するほどの事態が引き起こされる可能性すらあるからだ。

 すでに前哨戦は選挙区割りの変更をめぐって大分前から始まっていたが、3月24日夜の本会議で自民提出の選挙区割り変更案が維新とみんなの党以外の会派の賛成で成立した。議員定数109が88に削減(かって維新が強行採決した)されるにともない、選挙区間の1票格差を2倍以内にするため、現在の62選挙区のうち9区を合区して53区にする変更案が可決されたのだ。

 この区割り変更案を「大阪維新の会潰し」と紹介した朝日記事(3月25日)は、合区される9選挙区のうち7選挙区で維新の現職同士が重なり、1人区の合区では5人が、1人区と2人区の合区では3人がそれぞれ議席を失うと報道した。穿った見方をすれば、維新現職がいる選挙区を意図的に合区して維新の排除を狙ったともいえるが、問題はそれにとどまらない(はるかに大規模な)構造変化がこれからの自公選挙協力によって引き起こされるということだ。以下、それを詳しく説明しよう。

 以前からしばしば述べてきたように、大阪府議選挙の際立った特徴は、62選挙区のうち33選挙区が1人区だということだ。1人区すなわち小選挙区では多数政党の候補が当選しやすく、その可能性が少ない少数政党は最初から有権者に問題にされない傾向がある。したがって、これまで自民はその恩恵に十分すぎるほど浴してきたのであるが、前回は大阪維新の会の出現によって事実上の分裂状態に陥り、時の勢いもあって1人区33のうち30を維新に奪われた(公明はゼロ)。それだけ“維新旋風”が強烈だったのである。

 しかし、今回の区割りでも53選挙区中31区が1人区であることは変わらない。もし自公が1人区で票の潰し合いをすれば、維新に「漁夫の利」を占めさせる可能性は十分ある。そこで自公が1人区で候補者を一本化すれば、維新を2番手以下に蹴落とすことができるーーー。ざっと、こんなことで自公の選挙協力の話がまとまったのではないか。

 もっとも自公の選挙協力すなわち候補者一本化の前提には、自公両党を合わせた得票数が維新を上回らなければならないということがある。そこで直近の2013年参院選の比例投票数で53選挙区ごとに自公 vs 維新の票数の比較をしてみた。まず1人区では、東住吉区を除く30選挙区で自公票が(それも大幅に)維新票を上回る。もうこれだけで定員88のうち30を確保できるのだから、あとは15議席を複数選挙区で取れば過半数となる。

 次に22複数選挙区では、自公得票数が全選挙区で維新得票数を大きく上回っており、しかも両党合わせて25人の現職がいるので、これらの大半が当選するとなると50〜55前後の大府議団が出現する。これに民主8、共産4の現職を合わせれば、残りの維新は20〜25程度にしかならない。ただしこの数字は、2013年当時の政党別得票数を前提にしての話である。

 そこでもう一つの検討材料は、2015年段階での政党別得票数(比例代表)がどうなるかということだ。2013年参院選では直前に橋下氏の慰安婦発言問題があり、維新支持率は全国的に激減したものの、大阪府では依然として維新が第1位の105.3万票、得票率28.7%を確保した。ちなみに第2位は自民89.7万票、24.5%、第3位は公明66.7万票、18.2%、第4位は共産43.7万票、11.9%、第5位は民主27.1万票、9.3%である。

 しかし、橋下氏の影響力が地に堕ちた現在、維新が30%はおろか20%の得票率を維持することも至難の業であり、場合によっては10%台にまで落ちるかもしれない。そうなると議席数は1ケタ台にまで落ち込み、影も形もない少数政党に転落する。おそらくこのような事態になれば、橋下・松井両氏の政治生命は尽きたのも同然であり、次期ダブル選挙では出馬自体が不可能になるだろう。

 目下、維新と結いの党の間で合流に向けての話し合いが続いている。6月22日までの今国会会期末までに結論を出すと言うが、その先のことはわからない。ただし新党結成の場合でも、橋下氏が党首にならないと言明したところを見ると、彼も次期統一地方選の危機的状況がよくわかっているようだ。そのために全力を尽くして統一地方選を戦うつもりらしく、場合によっては橋下・松井両氏が辞任して「トリプル選挙」に持ち込むといった“世紀の愚策”までが検討されていると聞く。悪い冗談はほどほどにしてほしいと思うが、それが通じない相手であれば、「あらゆる可能性」を想定しておく方が賢明だろう。(つづく)