「岸田降ろし」が自民党内で起こらないことが維新の存在を際立たせている、岸田内閣低支持率の影響(その1)、岸田内閣と野党共闘(60)

 7月24日に公表された毎日新聞世論調査(22,23日実施)と読売新聞世論調査(21~23日実施)によると、岸田内閣の支持率は急落の一途をたどっている。毎日は支持28%、不支持65%。前回(6月17,18日実施)の支持33%、不支持57%から支持は5ポイント下落して過去最低の25%(2022年12月調査)に近づき、不支持は7ポイント上昇して3分の2となった。読売は支持35%、不支持52%。支持は政権発足時の56%から今回35%へと過去最低を記録し、不支持は27%から52%へ倍増した。いずれも岸田政権にとっては「赤信号」ともいうべき由々しき事態であり、本人はもとより自民党内でも危機感が充満していると誰もが思うだろう。

 

 ところが、内閣支持率がこれほど下がっても、自民党内ではいっこうに「岸田降ろし」の起こる気配がない。取って代わるだけの人物がいないからだというが、要するに党内で政権交代するだけの力が無くなっているということだろう。自民党はこれまで、岸内閣が安保条約反対闘争で退場しても、経済成長政策を掲げる池田内閣が登場して自民党政権を受け継いできたように、与党内での「疑似政権交代」を演出することで長期政権を維持してきた。それが政策面でも人材面でも行き詰まっているのである。

 

 今回の世論調査は、毎日に比べて読売の方が充実している。毎日が断片的な質問を並べているのに対して、読売は岸田内閣の重要政策をズラリと並べてその評価を尋ねているからだ。結果は「評価しない」のオンパレード、それも圧倒的な大差で「評価しない」が並んでいるのである。

 (1)自民党と公明党は今後も連立して政権を担うべきと思うか――「思う」28%、「思わない」59%。

 (2)健康保険証を廃止してマイナカードに一本化するのは――「賛成」33%、「反対」58%。

(3)マイナカードを巡るトラブルへの対応について岸田首相は指導力を発揮していると思うか――「思う」12%、「思わない」80%。

(4)マイナカードのトラブルは政府の総点検で解決すると思うか――「思う」15%、「思わない」78%。

(5)政府の少子化対策を評価するか――「評価する」24%、「評価しない」66%。

(6)物価高に対する政府の対応を評価するか――「評価する」15%、「評価しない」79%。

 

これに加えて、読売が内閣不支持の理由や政策評価の動向について世代分析をしているのも興味深い。ここでは、とりわけ18~39歳の若年層に岸田内閣への不支持が広がっており、政策評価についても若年層で「評価しない」が最多になっていることが指摘されている。

(1)内閣の不支持理由は、「政策に期待できない」が43%で最も高く、発足時(2021年10月)の20%に比べ、2倍以上に上昇した。世代別では、18~39歳の若年層が53%で最も高く、40~59歳の中年層が47%、60歳以上の高年層が30%と続く。

(2)マイナカードの総点検でトラブルが解決するとは「思わない」(全体78%)とした人のうち、世代別で最も高かったのは若年層の81%。岸田首相が指導力を発揮していると「思わない」(同80%)でも、若年層が84%で最多だった。

(3)物価高への政府対応を「評価しない」(同79%)として人のうち、若年層91%、中年層80%、高年層70%だった。少子化対策を「評価しない」(同66%)とした人のうち、若年層70%、中年層71%、高年層59%だった。

(4)岸田内閣の若年層の支持率は、昨年11月に36%に落ち込んで以来3~4割で推移し、今回は内閣発足以降最低の24%に落ち込んだ。

 

岸田内閣の支持率が「どん底」に近いところまで落ち込みながら、自民党内で「岸田降ろし」の起こらないことが、保守層はもとより大方の国民の目には、維新が自公政権に代わる「保守改革政党」との印象を与えている。自民がダメなら維新にやらせたらいい――、こんな空気が次第に高まってきているのである。今回の読売調査でも、政党支持率は維新9%(前回6%)で立憲4%(同4%)に大きく差をつけている。

 

こんな世論状況を「好機」とみたのか、維新は自らを「第2自民党」と位置づけ、馬場代表がインターネット番組「ABEMA的ニュースショー」に出演して、「第1自民党と第2自民党が改革合戦をして国家・国民のために競い合うことが、政治をよくしていくことにつながる」「自民党と維新の会が政権の座をかけて争うべきだ」と主張するまでにいたった。そのうえで、立憲民主党との連携について「未来永劫なく、やるかやられるかだ」と否定し、返す刀で「共産党は日本から無くなったらいい政党で、言っていることが世の中ではありえない。空想の世界をつくることを真剣に真面目に考えている人たちだ」と切って捨てた(NHKニュース、7月23日)。この発言は、ナチスが共産党を非合法化して独裁体制を敷いた当時の政治情勢を想起させるもので、維新がナチスの「突撃隊」の役割を担おうとする危険なファシズム体制の予兆を示すものだ。

 

いま(維新を除く)野党がなすべきことは、このような危険な兆候を見逃すことなく、「保守2大政党制」延いては「ファシズム体制」の実現を意図する維新の野望を粉砕し、それを阻止する体制を構築することだ。そのためには、前回の拙ブログでも指摘したように、一刻も早く「まともな野党共闘」を担える立憲代表に代え、革新陣営の再構築を図ることが求められる。(つづく)