神戸市政の破綻は神戸空港とともにやってくる、神戸市長選座談会その3、(堺市長選、神戸市長選はどうなる、その8)

(4年後?の神戸市長選をめぐって)
A:市長選が終わってからまだ10日も経たないのに、明日11月4日の夜、市民団体の方では「4年後の市長選に勝利する会」を開くそうだ。勝った方が「意気消沈」で、負けた方が「意気軒昂」というのも珍しい。いったい何が起こっているのか、その辺の事情を知りたい。

B:理由はただひとつ、神戸市政・「市役所一家体制」の崩壊がいよいよ目の前に見えてきたからだ。この状況は、ちょうど自民党政権が崩壊した末期症状とよく似ている。阿部・福田・麻生と3代続いた世襲首相に愛想を尽かした国民が一気に「政権交代」に動いた。そのときの空気にそっくりだ。

C:それともうひとつ、市民団体がこれまで共闘してきた某政党に見切りを付けたことも大きい。「自分たちでやらなければ駄目だ!」、「自分たちだけでもやれる!」という雰囲気が一気に出てきた。

A:でもそんな「空気」だけの情勢判断では危険だ。何か根拠でもあるの。

C:あるある。今回の市長選の最大の特徴は、30%そこそこの低投票率でありながら、しかも共産党が独自候補を立てる「分裂選挙」になったにもかかわらず、新人候補が現職候補に肉薄したことだ。つまり従来の選挙常識では絶対に起こり得ないことが起こった。これは神戸市民の意識に“地殻変動”が生じている証拠だといえる。

A:なるほど。「低投票率」、「分裂選挙」、「接戦」という三拍子がそろったことでそう判断したということか。通常なら投票率が上がらないと滅多に起こらない現象が起こった。そこに新しい政治動向の兆しを見るわけだね。

B:これは神戸の特殊事情の反映でもある。何しろ「市役所一家体制」が余りにも強く、また余りにも長く続いてきたので、市民の政治意識や政治行動がかなり屈折している。だから投票率を上げて「一気にけりを付ける」ということにはなかなかならない。

C:それに「神戸のオール与党体制」には表と裏があって、表向きは反対していても実は裏では(一部)つながっているという、まるで国政の「55年体制」のような政治構造がずっと持続してきた(いる)。そんな特殊事情も今回の市長選に影を落としていて、ますます状況が見えにくくなった。でも神戸市民の地殻変動は確実に起こっているよ。

神戸空港問題の意味について)
A:それでは、具体的に何が「市役所一家体制」が崩壊する引き金になるのかについて話を移そう。衆目が一致するのは神戸空港の破綻だが、それがどんなプロセスで進行するのだろうか。

B:空港建設の借金は、とりあえずは当面市債を発行して「借り換え」という綱渡りをせざるを得ないが、そのことが政治問題として爆発するのは、まずは2011年4月の市議会議員選挙あたりだろう。この段階では市の財政破綻の様相がはっきり出てくるので、市議選の最大の争点になることは間違いない。いままでは自公民オール与党体制で何とか事態を隠ぺいしてきたが、もうこの段階では隠しきれなくなる。その「政治責任」と「シワヨセ」をどこに押し付けるかをめぐって内部分裂が始まることは必至だ。

C:市議会の統制がとれなくなると、現職程度の政治力量では市政運営も難しくなる。この時点ではすでに「レームダック」化していることが予測されるので、市会議員選挙の前後に「市長辞任」ということも十分あり得る。そして後継候補は、市役所以外から「思いもかけない人材」を起用することの可能性の方が大きい。これが第2次爆発だ。

A:そうなると、市民団体が市役所一家体制の継続を前提にして「4年後の市長選に勝利しよう」なんて呑気なことを言っていると出遅れるね。それまでに市議選も含めて万全の準備をしておかなければならない。

C:しかしそこが判断の難しいところだ。今回の市長選で市民団体は十分すぎるほどのオールラウンド政策を練り上げた。それが新人候補のマニフェストに反映されたかどうかは別にして、政策の完成度はきわめて高い。だが次回の市議選や市長選では、ひょっとすると神戸空港問題が「シングルイッシュ―」(単独政治課題)として急浮上するかもしれない。財政状態が極度に悪化しているので、いろんな政策課題を実現できる条件がないからだ。

B:場合によっては、「神戸空港問題の解決」だけを掲げた新会派結成と市長擁立といった局面を考えておかなければならないかもしれないね。でもそれが神戸市民の最大関心事であり、神戸市政の最大課題であるなら、それに真正面から取り組まない政治勢力は淘汰されること請け合いだ。そのためには、たとえば「神戸市政刷新市民会議」といった新たな政治団体をつくって、いままでよりも旗色鮮明な方針を打ち出すことも考えられる。

C:しかしこの市政刷新会議は、いままでのようにどこかの団体や政党にすがるのではなく、志のある市民が個人の資格で参加して組織する「不偏不党」の方針を掲げないと、神戸市民を結集することができないだろう。要するに、いままでの「戦後神戸市政の総決算」をするつもりで出直すことが求められるということだ。

A:明日の市民団体の議論がどのような方向へ行くかはわからないが、今後の政治情勢の急変を十分考慮しての方針決定を期待したい。(続く)