「事業仕分け」による事実上の神戸空港整理要求、神戸市長選座談会その5、(堺市長選、神戸市市長選はどうなる、その10)

事業仕分けをどうみるか)
A:来年度予算要求の「無駄の洗い出し作業」と称して、行政刷新会議の「事業仕分け」が目下マスメディアの注目を集めている。そのなかで昨日11月16日、関西空港の補給金の凍結が打ち出された。その狙いはどこにあるのか、意見を聞きたい。

B:その前に、「事業仕分け」そのものの狙いについて検討することが必要だろう。民主党政権の目玉である普天間基地の県外移転、官僚の天下り禁止をはじめ、国政の根幹にかかわるマニフェストが次々と空文化していくなかで、予算の無駄を省くことが政権支持の命綱になっている。だから、ここを「クローズアップ」しなければならないというわけだ。

C:体育館を会場にしているのも「テレビの大受け」を狙った演出だ。これだけの大会場で、これだけの人数が一堂に会して大仕事をしているという「熱気」と「熱中ぶり」を見せるためだ。これこそ「劇場政治」そのものだろう。

B:もともと「事業仕分け」は、行政民営化のための「NPM」(ニュー・パブリック・マネージメント)のひとつの手法として出てきたものだ。今回の行政刷新会議の事務局長に起用された「構想日本」の代表が草分けで、全国の自治体に持ち込んでその効用を盛んに宣伝してきた。

C:関西の自治体では、「構想日本」の「NPM」(ニュー・パブリック・マネージメント)をもじって、「なんでも(N)、パッと(P)、民営化(М)」と呼んでいるよ。それぐらいどぎつい「リストラ集団」だ。

A:そういえば、「構想日本」の代表はもともと大蔵官僚だから、大蔵省流の自治体リストラを地方に普及するための民間運動組織をつくったのかもしれないね。政府臨調が民間政治臨調に衣替えして、さらに21世紀臨調へと名前を変えてきたのとよく似ている。

C:滋賀県の某市で実際に「事業仕分け」なるものの現場を見たが、いやはやその徹底した行政サービスの切り捨てには驚いた。「構想日本」のメンバーがある日「仕分け人」として数人やってきて、仕分けの対象として上げられた各種事業を片っ端から「廃止」「縮小」「再検討」などに仕分けしていく。1テーマ30分足らずで片づけていくのだから、会議は鉄砲玉みたいな質問攻めの連続で「アッ」という間に終わってしまう。

B:「仕分け人」は関東地方の自治体職員が多かった。横浜市小田原市厚木市などの職員が「ボランティア」と称してやってくるのだが、彼らはいったいどんな資格でやってくるのだろう。その中には、今度の行政刷新会議の「仕分け人」として起用されているのが結構沢山いるよ。

C:全く知らない自治体にやってきて、地元の事情も知らないで、「これは不要」、「これは廃止」なんていうのは、いったい「何様だ」といいたいね。地方行政、地方自治の蹂躙そのものだ。説明役の地元職員はまるで「被告席」に座らされているかの如く詰問されるままだし、それを傍聴している住民もなんら発言できない。これではまるで「植民地支配」とかわらない。

B:しかしそれが「外部識者による無駄の排除」とし賞賛されているのだから、何をかいわんやだ。今回の「事業仕分け」でも、小泉政権時代に重用されたアメリカのコンサルタント会社出身の大学教授が小泉時代のような大きな顔をして活躍しているし、また民主党の某女性代議士などは、まるで検察官か警察官の「取り調べ」のような傲慢な態度で関係者に接しているのを見ると鳥肌が立った。

関空補給金の凍結について)
A:話を本題に移そう。関空の補給金の凍結をどうみるかだ。私は表向き関空の問題だが、狙いは神戸空港の廃止か統合にあると思っている。

C:橋下大阪府知事の反応がなかなか面白い。本来なら頭から湯気を立てて怒るはずのところが、3空港整理の議論のためには「よい機会」だと歓迎している。彼自身は表向き「伊丹空港の廃止」を主張しているが、そんなことが出来るとは夢にも考えていない。本音は関空と伊丹を経営統合して国営化することだ。

B:ただ現状では3空港のどれかをスケープゴートにしないと、財務省のオーケーは取れない。そこで今回の補給金凍結をきっかけにして、大阪府兵庫県が幾ばくかの救済金を用意して神戸空港廃止の条件を整えるという事態が出てくるかもしれない。神戸市もこのあたりで「損切り」を覚悟して市長が責任をとる。大阪府兵庫県、神戸市が「三方一両損」で、関空伊丹空港経営統合案を出す方向が浮上してくるのではないか。

A:そこまで言うのは、「深読み」のしすぎだろう。橋下知事と井戸知事はいまや「天をともに戴かず」の間柄だし、兵庫県と神戸市は犬猿の仲だ。そんな解決策が出てくるはずがない。井戸知事が矢田候補を支持したのは、神戸空港の破産処理が県の負担になる事態を防ぐためだ。それ以上の財政負担などとてもとてもできない。となると、事態はどのように展開するのかまだまだ予測がつかないね。(続く)