普天間基地移設問題の国民新党案にも社民党案にも呆れた、(民主党連立政権の行方、その1)

普天間基地移設問題の検討委員会で、昨日3月8日、国民新党社民党の移設案が出された。それによると、国民新党は、2015年に海兵隊沖縄県外に撤退することを前提に、シュワブ基地の陸上部に1500メートルの滑走路を建設して移設するか、米軍嘉手納基地と統合するかの2案を提示したという。

社民党は、米領グアムなど国外へ全面移設する案を提示し、このほか海兵隊の拠点をグアムに移転して巡回部隊を日本本土で受け入れる案、国外移設が実現されるまで沖縄を除く国内に移設する案などを阿部政審会長の「私案」として提示したという。

政府は、シュワブ基地の陸上部への移設を軸に調整を進める方針で、3月末までに連立3党の党首級による基本政策閣僚委員会で具体的な候補地を決め、5月内に決着させる構えらしい。

こんな連立与党の動きを見ていると、なんだか「出来レース」のゴール(着地点)が予定通り近づいてきたようで不快極まりない。と同時に、「国民新党社民党も駄目だなあ」との実感を改めて深くする。

郵政問題の一点で民主党と連立を組んだ国民新党には、もともと期待していなかった。しかし下地国対委員長沖縄県の出身とあって、もう少し沖縄県民の気持ちを代弁するかとおもったら、逆に地元住民へ米軍基地の受け入れを迫る有様だ。こんなのが沖縄選出の代議士だと思うと悲しくなる。

彼の移設案の最大のセールスポイントは、「現実性」なのだという。アメリカへの国外移設案も県外移設案も「実現しそうにない」から、沖縄で受け入れるのが「一番実現性のある案」だというわけだ。ただし、「2015年までに米海兵隊沖縄県外に撤退する」ことが前提になっているのが、「ミソ」といえば「ミソ」らしい。

戦後50年間にもわたって米軍基地問題に悩んできた沖縄の同胞たちに、「まだこれから15年間も我慢しろ」という米軍張りの厚顔さには空いた口がふさがらないが、「15年以内に米海兵隊の撤退」を前提にして「現実案」を出しているというのであれば、国民新党はこの「前提」について果たしてアメリカとの確約を取ってきたのだろうか。

私は、国民新党案は「現状維持案」、「現状固定案」以外の何物でもないと思っているが、それでももし下地氏が「沖縄受け入れ案」を現実的だとして提示するのであれば、少なくともその前提である「米海兵隊の沖縄撤退」の現実性を示さなければならないだろう。そうでなければ、国民新党案は「砂上の楼閣」そのものになる。

だがこの点について、下地氏も国民新党も何も語っていない。「現実的」と称する移設案の前提条件がもし架空のものであるなら、国民新党案は「架空案」でしかなく、結果は「現状維持案」、「現状固定案」に落ち着く他はない。これは、沖縄県民を愚弄し欺くための「極めつきの案」だといわなければならないだろう。

一方、社民党案はどうか。グアム移転案を第1候補に挙げていながら、なぜ国内移転案や基地機能の分散案をわざわざ付記しなければならないのか。それも「社民党案」としてではなく、なぜ阿部氏の「私案」として示さなければならないのか。連立与党間の政策協議の要となっている普天間基地移設問題に関して、政党としての方針を「私案」としてしか示すことができないのであれば、社民党はもはや政党としての体をなしていないといわれても仕方がない。

福島党首と阿部政審会長の意見が異なるのであれば、政審会長を変えればよい。党首の意見が通らないのであれば、党首を辞めればよい。それが社民党が政党としての役割を果たし、存在していくための最低のケジメなのではないのだろうか。

結局のところ、グアム移転案は「羊頭」となり、阿部私案は「狗肉」となっていくのではないか。そして阿部私案はついには「狗肉の細切れ」となり、政府の「シュワブ陸上部移設案」に近づいていくのではないか。

普天間基地移設問題は、民主党への「政権交代」の意味と内実を問う最大の試金石となるだろう。平野官房長官が名護市長選の結果を「斟酌する必要はない」といい、沖縄県議会や名護市議会の全会一致の県外移設決議を「決議を超えて理解をしてもらう必要がある」と広言してはばからないのが、もし民主党の本質であり本音であるとしたら、この政党はファッショ政党となんら変わることがない。

左手で「地域主権国家」を掲げ、右手でシュワブ陸上部へ「普天間基地移設」を強行するようなデマゴギーは、もはや通用しない。「沖縄県民の気持ちを大切にしたい」とことあるごとに言明してきた鳩山首相自身は、いまこそ「命を大切にする政治」と「友愛の心」を示すべきだ。また民主党と連立政権を組んできた社民党は、福島党首の「沖縄たらいまわしは絶対ない」との約束を死守すべきだ。両党党首の言動がこれからの日本の政党政治の運命を左右することを肝に銘じて。(つづく)